ハーメルン
とある英霊の一方通行
久しぶりの休息は他人の家で

「そろそろだから」
衛宮が振り返りながら、そう言った。
かれこれ数十分は歩いている。
橋を渡ったり、路地裏を通ったり。
思ったよりも遠い道のりに、一方通行の顔には少しの疲れが出ていた。
「……」
ここまで距離が離れている場所に、衛宮達は一体何をしにきていたのか疑問が浮かんだ。
別に一方通行が気にする必要はないのだが、これ程までに暇な時間が続いてしまうと、くだらない考えでも没頭してしまう。
(……バーサーカー、か?)
いや、その線は薄いだろう。
あれ程の怪物に、時間を掛けてまで挑む理由は無い。例え、戦力を調べる為だとしてもマスター同士が近くで観戦するのは違うと思う。この聖杯戦争が、捕まえたモンスターで戦わせるゲームのようなモノだったら話は別だが。
(だとするなら、『場所』か。数十分かけてまで訪れる必要があった場所)
一方通行はこの街を知らない。
地理や有名スポットどころか、近くにある学校や店の名前すら。だが、バーサーカーと戦闘をした場所の近くには、一つだけ覚えている場所がある。
教会だ。
あの胡散臭い男が神父をしている教会。
その近くで行われていた戦闘。
今思い返せば奴と別れる時の言動には何か含みがあった。事の詳細は話していなかったが、何が行われているのか知っているような感じだ。というか、ほとんど確定じゃないだろうか。
(あの神父……相当な闇を抱えてやがった。あれは普通に生活して持てるようなモンじゃねェ)
学園都市の闇に浸かっていた一方通行がいうのだから間違いない。別に言動も行動も特別変でわなかった。言ってしまえば、ただの勘だ。
だが、それでも確信できる程の何かを一方通行は感じ取っていた。
と。
「着いた。ここが俺の家だ」
衛宮が、やっとと言った感じで足を止めた。
「─────」
一方通行も同じように足を止める。
……何というか、思ったよりもデカい家だった。
ただの一般人が住む一軒家というより、何処かの名家の家みたいだ。目の前には寺に付いているような門があり、そこをくぐった一〇メートル程向こうに屋敷が建っている。
他にも土蔵や道場のような建物もあった。
学園都市に住んでいる身からすると、和式の家というのは何だか新鮮さを感じる。基本的に建てられているのはビルとマンションと研究所ぐらいなのだから、そう思うのも無理はない。
「……オイ」
と、一方通行は玄関へと向かおうとしている衛宮に声をかけた。
「どうした?」
衛宮は鍵を取り出しながら振り返った。
同じようにセイバーも一方通行を見る。
「オマエ、親にはなンて説明するつもりだ」
正直、ここは疑問に思っていた。今、一方通行が一番面倒だと思っているのは、この国の警察だ。抵抗すれば逮捕される事はないのだが、いちいち追いかけ回されるのは面倒なのだ。
衛宮の親が不審に思って警察に連絡するなんて事があったら笑いすら起きない。正直、ここら辺は良く考えた方がいい気がする。
「────────」
が、返ってきた反応は思っていたのとは別のモノだった。
数秒の沈黙。
どう説明するか考えている、と言った感じじゃない。何か困ったような、少し躊躇っているような、普通とは違う反応だ。
「……そこは安心してくれ。基本的に、俺は一人暮らしだから」

[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/6

[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク
携帯アクセス解析