ハーメルン
とある英霊の一方通行
衛宮切嗣と正義の味方

「……」
教会へと訪れた。
門を越えて、教会を見上げる。
昨日見にきた筈だが、何故か思ったよりも豪勢な作りに見える。
昼と夜ではやはり雰囲気が違うからだろうか。夜では少し不気味だったが、昼の場合はそうでもない。聞こえる音が風や小鳥の鳴き声ぐらいしかないので、どこか神秘的に感じた。
「マスター」
声をかけられ、後ろへと振り返る。
セイバーは門を少し越えたところで、こちらを見たまま足を止めていた。
「私はここで待機します。恐らく、切嗣についての話し合いに私の存在は邪魔でしょう」
「別に、そんな事はないけど……」
「いえ、意外にもそういう物です」
セイバーは首を横に振った。
「ただし、何かあれば私は呼ぶように。あの神父は何をしでかすか分かりません。細心の注意を払うよう心がけてください」
「……分かった」
それだけ言うと、一旦セイバーと別れた。
十メートル以上ある距離を歩くと、教会の扉の目の前に辿り着く。扉の前には銅像が立っており、異様に目を引いた。
そちらを横目で見ながら横を通ると、そのすぐ奥にある扉のドアノブを掴んだ。
「──────」
意を決したようにドアノブを捻りながら、扉を開ける。
異様な神父がいる教会へ踏み入る。
「──────ぁ」
数歩、中へと踏み入るとすぐに足を止めた。
教会の中には二つの人影があった。
片方はあの神父、言峰綺礼だ。
彼は講壇の前に立ち聖書のような物を読んでいる。
そして、もう片方。
金髪の外国人だった。
外国人特有の顔立ちに、赤い瞳が特徴的だ。
その二人が同時にこちらを見る。
その瞬間、こう思った。


殺される。


「─────ほう」
言峰が興味深そうに呟く。
そして、向けている視線を少年から金髪の男に変えると、
「悪いが、席を外してもらえるか?」
「……仕方ないな」
金髪の男は椅子から立ち上がると、教会の奥の方へと進んで行った。
教会を訪れた外国人かと思ったが、そうでもないらしい。ともかく、この神父と親しい間柄の時点で何か不吉な予感がする。
「それで、何か用かな? 衛宮士郎」
「あ────あぁ……」
額に浮いた汗を拭き取る。
言峰は硬い足音を立てながら、こちらへと歩み寄ってきた。
「訊きたい事があるんだ、アンタに」
「ん? 聖杯戦争については十分に説明したつもりだったが」
「違う。衛宮切嗣のこと……アンタは知っていたんだろ?」
その問いに、神父は口を歪めた。
ただ、その名前が出た事が面白いと言わんばかりに小さく笑う。
「ああ、知っていたとも。私は前回の聖杯戦争の参加者だ。衛宮切嗣とは文字通りの殺し合いを繰り広げている」
神父は腰に手をあてる。
「それで、何が訊きたい?」
「……アンタから見て、切嗣(オヤジ)の姿はどう映っていたんだ?」
神父は口を歪ませながら黙り、そして目を瞑った。過去の出来事を思い出している、というよりこの状況を楽しんでいるかのようだった。
目を瞑り、数秒の沈黙の後に、神父は一歩進んでようやく口を開いた。

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