満たされた杯
「それで? お前らはどこ行ってたンだ?」
一方通行から珍しく会話を切り出したため、セイバーが少し驚きながら、
「え、えっと……私達は教会に行っていました。そこの神父に大事な用がありまして」
「教会?」
一方通行は眉を顰める。
「まさかだが、デカい大男が神父をやってる場所じゃねェだろうな?」
その発言にセイバーは、
「もしやアクセラレータは、あの神父と知り合いなのですか?」
「……少し言葉を交わしただけだ。正直、二度と会うつもりはねェ」
一体何の用であの神父のところに行っていたのかは気になるが、聞く気分ではなかった。あの神父を思い出すだけで、学園都市の『暗部』を思い出して気分が悪くなる。本当にクソッタレな人間は何処にでもいるらしい。
(まァ、いいか)
ため息を吐きながらテレビを見る。
その発言についてセイバーは眉を顰めるが、それ以上は何も訊いてくる事はなかった。
ただ、テレビの音と衛宮が料理をする音だけが響くという、いつも通りの時間が流れる。随分と暇な時間なのだが、言ってしまえば平和というモノなのだと一方通行は、ふと思った。
(……たった一日でこれか。平和ボケしてンな)
今日一日、何も無いだけで気を緩めてしまっている。今が戦いに真っ最中というのを忘れてはいないのに、だ。
まあ、こうして平穏という時間が続くのは大変結構だが、そろそろ何かしらの行動を起こさなければならないとは思う。今やれる事は少ないかもしれかいが、立ち止まっている状態よりかは幾分かマシだ。
「───────」
一方通行は視線を襖へと向けた。
その襖からは、オレンジ色の日光が部屋に差し込んでいる。明るい時間で行動するのも悪くはないが、個人的には人が少ない夜の方が行動しやすい。
それに、恐らく夜中の方がサーヴァントという存在と遭遇する確率も上がるだろう。遭遇するモノなのかどうかは知らないが、前のセイバーとバーサーカーが戦っていたように、何らかのサーヴァント同士が戦闘している可能性もある。
当たればラッキー、程度の気持ちで行けばいい。
「よし。終わり、と」
そう言って、衛宮が台所から出てきた。
「意外と早く終わりましたね、シロウ」
「いや、まだ料理の支度をしていただけなんだ。作り始めるのは、桜たちが来てからにしようと思う」
そうですか、とセイバーは言った。
しかしその反面、一方通行はその言葉について深く考えていた。理由としてはごく単純で、その桜という人物について聞き覚えがないからだ。
聞き覚えはない。……ないのだが、何となく予想というモノはつく。
(まさか、朝の奴らじゃねェだろうな……)
それは少しマズイ。
いや、別に何もマズイ訳ではないのだが、少々面倒な事になる気がする。朝の状態であれだけ騒がしかった奴が、夜になれば大人しくなっているとは考えにくい。衛宮があの虎のような女性と話をつけているのなら問題は無いと思うが、結果はどうなっているかは分からない。
だが、
(それでいちいち俺が家ン中歩き回るってのも馬鹿らしい……あンな奴に振り回されているなンて冗談じゃねェよ)
思い出しただけで苦い顔をする一方通行。
そんな一方通行を気にする事なく、衛宮はセイバーへと、
「セイバー、今後の方針なんだけど」
その一言で、場の空気が変わった。
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