スープの隠し味を探せ
そして、翌朝————
ボクはいつもの掃除洗濯をこなした後、
食材を集めに監視基地周辺を
あらかた探し回りました。
あのメモの通りだとすると、
ガンキマスの味噌汁に近い料理でしょうか?
早速、厨房で集めてきた食材とにらめっこをして、
アイデアが閃いたら
そのイメージのままに包丁を振るいます。
そして、数十分後————
「おし様、できました」
あのメモの通りの料理の外観はどうにか整いました。
後はおし様の記憶に聞いてみるしかありません。
「フーン、こりゃ素材は何を使ったんだい?」
「ガンキマスの身とササリの卵黄、
スープは棒味噌を溶いて、
薬味はトコシエコウの実を使いました」
おし様がゆっくり匙を口元に運んでゆきます。
しばらく記憶を確かめるかのように、
おし様は咀嚼しながら目を深くつむり、
物思いに耽っているようでした。
「どうですか?」
「フン、見た目はまぁ似ているが……味は全然だね」
「ダメ……でしたか」
ガックシと肩を落とすボクを尻目に、
おし様はなんだかんだでスープを完食していました。
「魚の身は……
ガンキマスほど味は濃くなかったね。
そう、もっと淡白な味だったよ。
添えられた薬味も、
トコシエコウよりも爽やかな風味だったね」
ガンキマスではないとなると、
イケノスケ、テンコウメ、ハマシラマ……
それとも他にあるとすればなんでしょうか?
「ああもう……
おし様の昔の記憶だけで、
作れなんて無理ですよ~」
「なんだい、もう降参かい。
これはライザの命日の肴は、
マルルクの亀甲縛りで決定かねぇ」
思わずそうされることを想像して、
背徳的な快……いえ、おぞましさを感じ、
おへその下あたりに暗い熱が脈打つのを感じました。
「そ、それだけはご勘弁を~」
「それなら、せいぜい頑張るんだね」
嘆いていても仕方がありません。
明日は買い物ついでにオースに上がる予定があるので、
その時に手がかりを集めてみたいと思います。
ジルオさんは探屈に出ていて会えません。
他にライザさんと面識があり、
その中でもできれば料理に詳しい人がいる場所。
そうなると、
うん、あそこしかありません。
そして、更に翌朝地上への外出用のパラソルも装備して、
目指すはオースの————
◆ ◆ ◆
「いらっしゃい。あらマルルクちゃんじゃない」
店の扉を開き子気味良い呼び鈴の音が鳴り、
店主のラフィーさんが元気な声でボクを迎えてくれます。
「ラフィーさん。お久しぶりです」
「今日はどうしたんだい?」
ナットさんに案内されてからと言うもの、
香辛料を買いにボクが定期的に立ち寄る、
ラフィーさんのお店。
何度か買い出しに来ている内に
ラフィーさんとは打ち解けて、
料理の献立についても何度か
[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/3
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク