ハーメルン
アスティカシアの中心で『ロケットパンチ』と叫んだ男
01. ウェルカム to アスティカシア!
その日、スレッタ・マーキュリーは運搬船の無重力の中で夢想していた。
今から自分が向かい、通う学校とはどんなところだろう、と。
優しい人がいっぱいだったらいいな。友達もいっぱい作りたいな。やりたいことリストはたっぷりあるけど、卒業までに全部埋められたらいいな。ちゃんと勉強して、お母さんとみんなの役に立ちたいな。
家族であるエアリアルとの二人旅。初めての水星以外の場所。そして、初めての学校。
不安がないわけじゃない。聞いた話だと何人も同じ年ごろの学生が通うと聞いているし、その中でまともにふるまえるか、ドラマや創作みたいないじめにあったりしないかなんて暗い想像もしてしまいそうになる。
だけれども、それ以上のワクワクがスレッタの胸には詰まっている。
そして、
「あれが……学校!」
宇宙に浮かぶ大きなフロント。そこに広がる場所こそ、スレッタの通うアスティカシア学園。
あと小一時間もすれば運搬船が着陸して、スレッタは入学する……はずだったのだが。
「…………あれ?」
窓から乗り出して学園を見ていたスレッタの眼の端に、人影が映った気がした。
さらに目を凝らしてみると、それは間違いなく宇宙服を着た人間で。さらには誰かを呼ぶように両手を大きく振っている。
(遭難者……!)
スレッタは大慌てで走り出す。過酷な水星環境で人命救助にあたっていたスレッタにとって、この状況は見過ごせるものではなかった。
エアリアルに乗り込み、運搬船のスタッフによる制止もかまわず、宙へと発進。全力で急ぎつつ、けれども脆い人体を壊さないようにと慎重に人影へと接近する。
するとその人影がワタワタとさらに大げさに慌てだした。
まるで『ちょっ! まだこっち来ないで!』とでも言いたげな様子。だけれど、スレッタはそれを必死に救助の手にしがみつこうとしていると思い込み、
「もう大丈夫です! 安心して…………って、えぇ!?」
次の瞬間、目を丸くして驚きの声を上げた。
なぜならスレッタの眼前、学園の方角からいくつものミサイルのようなものが発射され、それがスレッタ達のところへと向かってきたのだから。
そして、
パン!パンパン!!
ど派手な音と、カラフルな色をまき散らしながらスレッタとエアリアルよりちょっと離れたところで爆発したのだった。
けれど、目をつぶったスレッタに衝撃も、痛みももたらされない。
なぜなら、
「……わぁ♪」
それは決して攻撃などではない、信号弾を利用した花火。
宇宙の漆黒の中ではそれはひときわ輝いていて、スレッタは思わず頬を緩ませてうっとりと見入ってしまった。けれど、その手の平には救助者の姿があるはずで。
「はっ! ご、ごめんなさい! はやく助けないと!!」
テンパりながらスレッタはエアリアルの手の中にいる人へとカメラを向ける。まさか見入っている間に限界を迎えてたりは、と不吉な想像が頭をよぎるが、
「……へ?」
今度もまたスレッタは目を丸くして驚いてしまった。
その宇宙服を着た人影。体格から見るに男の人だろう。その男はヘルメット越しに満面の笑顔を浮かべながら、
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