四 緑髪の女の子(前)
話せる言葉が増えてきて、これでロキシーにもっと色んなことを訊ける! と、思ったら、にぃにの五歳の誕生日を祝った翌日に、にぃにに〝水聖級魔術師〟という称号を授け、ロキシーは荷物をまとめて家を出ていった。
両親は、次は私の家庭教師としてこのまま雇い続けたいとも思っていたようだが、しばらくは魔術の腕を磨きたいから、と断られていた。
もっと仲良くなりたかった。悲しい。
そうそう、この国には誕生日という日があり、人は自分が生まれた日に歳をとるそうなのだ。元旦にいっせいに歳をとるのではないらしい。満年齢が導入されたのは明治35年。誕生日を祝う習慣が定着したのは昭和25年以降
私とにぃにの誕生日は近いため、にぃにが五歳になってすぐに私は二歳になった。
にぃにの誕生日は、みんなでお祝いした。
母様は本を、父様は直刃の剣を、ロキシーは紅い石が先端についた小さな杖を贈っていた。
私はなにも用意がなかったため、お気に入りのおもちゃと外で摘んだ花でにぃにの箱床を埋めつくしておいたら、翌朝に起きがけのにぃにの「何じゃあこりゃあ!?」という声が家に響いた。
三年後は、私もにぃにみたいにお祝いしてもらえるらしい。
楽しみにしててね、と母様に言われた。やったあ。
私がおっぱい以外のご飯を食べられるようになってから、母様は、ときどきお昼すぎまで家を空ける。
そして、その家を空けている間は、村の治療院というところに居て、怪我をした人を治してあげたり、庭で育てた薬草を持ってきて具合の悪い人に煎じてあげたりしているのだ。
働く母様について行ったり、お使いに行くリーリャについて行ったりするうちに、友達ができた。
でも、ブエナ村に私と同じ年に生まれた子供はいないらしく、みんな年上か、背中におぶわれている赤ん坊だった。
そして、女の子は女の子で、男の子は男の子で遊んでいることが多いみたい。
わかるよ。異性と遊ぶとからかわれるんだよね。
「シンディちゃん、あーそーぼー!」
「エマちゃん!」
暖炉のそばに腹ばいになり、にぃにに本を読んでもらっていたら、外から声が聞こえてきた。
椅子に登り、窓を開け……か、硬い。開かない。ガタガタやっていると、にぃにが開けてくれた。
「あいがと」
「どういたしまして」
観音開きの窓から顔を出し、門の真ん中に立っているエマちゃんに手を振る。
エマちゃんは鋳掛屋の子だ。
把手が外れた鍋を修理に出しに出かけたリーリャについて行ったときに、友達になった。
エマちゃんは六歳。灰色の髪を肩の上で切り揃えた、眦のきりりとした綺麗な女の子だ。しっかりした子なので、エマちゃんと一緒のときは、子供だけで外に出る許可が母様から出ている。
エマちゃんがいないときは、遊ぶのは庭か家の中だけ。
「外で遊ぶのか?」
「ん!」
にぃにも来ていいよ。
手を繋いで玄関に向かおうとしたが、「俺はいいよ」とそっと振りほどかれた。
前に、友達が三人ほど来て庭でおままごとをしたことがあった。
その時は番犬役が足りなくて、にぃにに混ざってもらったのだけど、門の傍を通りかかった男の子たちにからかわれたのだ。
『あいつ、男のくせに女と遊んでるのかよー!』
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