ハーメルン
Fate/DebiRion.
11.はいしんのれんしゅうちゅう~

「えー、ボクたちの目的はー……なんだっけ?」

「まったくでび様ったらいけませんわ。でび様の目的は自らを崇拝する人間を増やし、力をつけること。そんなこともお忘れになるなんて、脳みそまでコアラになってしまったんでしょうか」

「おお、そうだったそうだった。では小娘、締めを頼む」

「嫌です……じゃなくて、視聴者の皆様、でび様を崇拝ください。でび様の力が増せば数々の奇跡を起こすことができます。皆様の心に秘めた願いすら叶えることが出来るでしょう。でびちゃ……様は慈悲深い悪魔です。今はただのコアラですが、力を着ければ皆様の不幸を決して放ってはおきません。皆様の運命をあの作り物の神から奪い返し、きっと良い方向に導いてくださるに違いありません」

「ん? ん~……うん。その通りだ! みんな、チャンネル登録をよろしく頼むぞ~、じゃあな~」
 
 カメラの前でしばらく笑っていた二人だったが、その顔は次第に固まっていき、どちらからともなくスッと無表情になった。

「お疲れ様ー! でびるもリオンちゃんもよく頑張ってるよ。すっごくいい感じ!」

 画面に映った本間ひまわりの顔を二人はじっとりと見つめる。次いで、二人の視線は何も言わずに社築の方に移る。社築は躊躇いながらも口に出した。

「いや、やばいだろ……」

 二人はため息をついて、肩をがっくりと落とした。

ーーーーーーー

「まあ、ちょっと緊張しすぎやね。もっと肩の力を抜いてる方が視聴者さんも見やすいと思う」
「ふむふむ」

 本間ひまわりの言葉を聞いて悪魔はメモ帳に何かを書き込む。鷹宮がそのメモを覗き込むと、それはとぐろを巻いたうんちの落書きでしかなかった。

「っつーか鷹宮のあれ何? 信者プレイ? めちゃくちゃ下手だぞ。慣れてないの丸見えだから」
 
 社築の指摘に鷹宮はウっと唸った。

「それは、だって仕方ないじゃないですか。畏怖されるような悪魔でなきゃ……」
「いや、まずお前が畏怖してねーだろ。コアラって完全にぼろ出してんじゃん」
「あ、小娘! あのときは気づかなかったけどよくもボクをコアラって呼んだな!」

 悪魔が突っかかるように鷹宮の顔の前を飛ぶ。鷹宮はそれを払いのけて応戦した。

「うるせえよ! どっからどう見ても角の生えたコアラじゃねーか!」
「言ったなー! 今日こそはボクの恐ろしさを思い知らせてやる!」
「おう上等だよ、かかってきな!」

 そうして殴り合いを始めた二人をよそに、ひまわりと社はため息をつく。

「まあ、最後の方はアカン宗教みたいやったし、方針を見直した方がいいのかな」
「うーん、SNSで告知もして、デビュー配信ももうすぐだっていうのに、これはそろそろまずいか……?」
「カメラが回ってないときは見てて面白いんだけど……お!」
「ああ、なるほど」
「へえ、やしきずも気づいた?」
「まあな。それならなんとかなんじゃねーの?」
 
泥沼と化しつつある二人の争いを、ひまりと社はパソコン越しに生温かい目で見守った。



「大変や大変や大変や!」
 
 バーの扉を勢いよく開けて入ってきた椎名は、全く椎名の方を見ようともせず談笑している花畑チャイカと赤髪の少年、ライダーを見て、地団駄を踏んだ。

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