ハーメルン
ドルディアに生まれた転生者
ボレアス家とパーティと暴力と定職と四年の勤務とパウロとパウロの息子と例の作戦



 とりあえずはエリスについていく。

 「どうするギュユスナ?」

 ギレーヌが俺にだけ聞こえる様に、耳元で囁いた。

 屈んでようやく辿り着く、頭のてっぺんにある俺の耳に囁く動作は、それはそれは大きく動かないといけないので、目の前のエリス嬢にはすぐさま気付かれた、声は聞こえていないだろうが、「なにをしているのよ!はやくきなさい!」と、言わんばかりの表情を浮かべて立ち止まりこちらを見ていた。

 ここで俺も喋ってはエリスにバレそうなので、ギレーヌに必死に、エリスを騙くらかして帰ろうとアイコンタクトを送るが…

 …これはわかっていないな。

 渋々、ギレーヌの手を引いて、なんども俺たちが付いてきているか、振り返って確認する。赤毛の小さな引率員さんについていくのだった。

 

 迷わない足取りで進む彼女は、あっという間にロアの中心地ボレアス・グレイラットの城の様な館についた。

 「わたしよ!」

 そう言って、門の前で叫ぶエリス。

 直ぐに使用人達や執事、果てには貴族の服を身につけた偉そうな人族がゾロゾロと雁首揃えて飛び出してきた。

 「エリス!」

 血のような深い赤色の髪をたなびかせた貴族の女性が、エリスに抱きつく。あれが母親だろうか、なかなか立派ナものをお持ちのようだ。エリスちゃんもスイカになるのだろうか。

 親子感動の再会の光景を見ながらで、下世話な事を考えていると、糸目で線の細い軽薄そうな貴族男性がやってきた。軽薄そうな男に若干のトラウマのある俺たちだが、初対面の仲良くなった子供の親らしき人物にあからさまな反応をするわけもなく、剣の聖地にいた期間に武芸者としての目上の人への態度を学んだと言う、ギレーヌに追随した。

 「君たちが、エリスを見つけてくれたんだね。」

 糸目と思っていた男が目を見開き、俺とギレーヌの頭ら辺や腰のあたりを行き来する様に凝視してゴミパウロが女といる時よく漂わせていた変な匂いを撒き散らし鼻息を荒げながら、実に平坦で礼儀正しい声でそう喋った。脳がバグりそうだ。

 「そうだ。送り届けたので帰る。」

 そう俺の目からは、ぶっきらぼうに言い放っている様にしか見えない。ギレーヌの武芸者としての礼儀作法を観察して、これがこの世界の武芸者の作法と考えながら、俺は人族の礼儀を知らないので黙りこくって、赤毛のボインのチャンネーに連れて行かれているエリスちゃんに手を振っていた。

 「まぁまぁ、そう言わずに。娘を見つけてくれた恩人を何もなしに送り返しては、グレイラットの名が廃る。ささ、エリスの5歳の誕生パーティーの途中だったんだ、なんなら美味しい食事もあるよ。」

 「そうなのか。では行くとするか。」

 最後の部分を俺に子供と勘違いしているのか、目線を合わせる様に体を屈ませて言った糸目に内心ブチギレながらも、礼儀作法に詳しいらしきギレーヌが楽しげにしっぽを揺らしながらズカズカとパーティー会場に進んでいくのを見て渋々ついていった。

 パーティー会場は異様にテンションの高い声のクソデカい爺さんにエリスの恩人だと担がれ振り回されたり、エリスちゃんが執事の人に殴る蹴るなどの暴行を加えているのを見てショックを受けたり、貴族に囲まれてアウェーを感じたりした以外は、恙無く進んだ。

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