ハーメルン
サイバーだけどパンクでなし―211×―ルームランナーズ
恐るべき、殺人アンドロイド
―――CYBER・SCIENCE・Online
通称『CSO』は、あくまで中堅程度の人気のオンラインゲームであった。当時としてはそこそこ挑戦的なVR限定のオンラインゲームであり、未来的な都市で特殊な生まれの主人公が、銃と超能力という名のスキルを使い、バッタバッタと無双していく。そんな感じのゲームであったのだ。脚本家は有名だし、一部キャラクターは人気のデザイナーやイラストレーターが協力。小説版の売り上げも好調で、何なら漫画版の売り上げも良好であったという噂である。
しかし、それでも、実際のゲーム自体の売り上げはぼちぼちであったらしい。そりゃそうだ、なにせ当時VR機械そのものがマイナーなうえで高価な代物だ。それなのに話題になる程度は売り上げを出しただけ立派なのだ。もちろん私はそれに中程度のファンであった。具体的に言えば、1年ぐらいはどっぷり楽しんだし、その後もアプデのたびにログインをする程度にはファンであった。
だからまぁ、このゲーム自体はそこそこ好きであったし、今までの人生で好きなゲームを上げていくのなら、5本指は厳しいが、10本の中の一つくらいには入れられる。そんな感じのゲームであったのだ。
『でも、今は都合でこの世界しか空いてないから、このゲームの世界に転生してね』
『ふざけんな』
『あと君のメインキャラはちょっと……いろんな意味でやばすぎるから、サブキャラの方で。
まぁ、これでも一般人より強いから問題ないよね』
『問題しかないが?』
『大丈夫大丈夫、主人公補正があればなんとかなるから。
プレイヤーが操作すればメインキャラでもサブの金策キャラでも主人公だから!それじゃ、いってらっしゃ~い』
◆◇◆◇
「……はぁ、それでうまくいくわけないんだよなぁ」
思わず懐かしい生まれる前の記憶を懐かしみながら、地下道を歩く。
周囲には無数の異音を上げるパイプが張り巡らされ、切れ掛けの電灯が瞬いている。
脇道の奥から、謎の悲鳴やうめき声が聞こえ思わず身構え、義眼のセンサーで確認するも、ただの浮浪者の寝言だと気が付き、ほっと胸をなでおろす。
「ったく、世の中上手くいかねぇよな~。
転生チートなら、せめて金に困らない程度の自由が欲しいなっと」
思わず愚痴をこぼしながら、ゆっくりと足を進める。
いやなことを思い出した反動か、気持ちが沈むのが分かり、バイタルデータもそれを表している。
そんな、情報が分かってしまう自分の体に対してまた気が沈み、非常に緩やかだが、それでも無限に気が沈んでいくのを自覚してしまった。
「っと、いけないいけない。
まったく、こんな場所にいるから気が沈むんだ」
現在私がいるのは、巨大復興都市サイサカの地下の万国通り。
このサイサカにある地下道の中でもトップクラスに陰気で危険な場所だ。
特にこの万国通りには、このサイサカ6大危険地帯と呼ばれているコロッセオ区域というものがあり、そこでは日々サイボーグや戦闘アンドロイドが殺し合いをしているとか。
なんでそんな危険な場所が、自分が住んでいる都市に6つもあるんですかね??
「ここは元気を出すため……おっほ♪」
そこで私は、こっそりと胸元に忍ばせた封筒をとりだし、その中身を見る。
その中には1枚の使い捨てプリペイドカードがあり、その表面には11,000の文字が刻まれていた。
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