ハーメルン
サイバーだけどパンクでなし―211×―ルームランナーズ
完成されし祝福を見てみよう!

──アンドロイドとは、完成された人造人間である。

電脳化より以前に存在したその技術は、とある天才科学者によって生み出されたものである。
人の様な外見に、人と類似した理性。
賢者のような知性に、動物以上の身体能力。
さらには、生まれながらにして大人であり、完成品であるという特性。
そして、何より安く作れ早く壊れるという圧倒的製作コスト!

おおよそ、≪生殖能力がない≫という事実と≪主人登録が必要≫という欠点がなければ、人間に危険視されていたであろうその超常技術。
そんなアンドロイドは、その技術が誕生して以降、あっという間に世界中に広まり、人類の奉仕者として、現在もその地位を確固たるものにしていた。

そして、211×年の大電脳時代において、アンドロイドの技術は爆発的に成長したと云えよう。
通常の人間は電脳処理をしてなお耐えきれぬことの多い、≪電子データ≫による行動学習だが、アンドロイドは生まれつき、その体と脳を電脳用に最適化することができる。
ゆえに、現在のアンドロイドは≪電脳ネット≫に接続さえできれば、ありとあらゆることをすることが可能になった。
そして、サイボーグ技術の発達やアンドロイド人権化の活動により、もはやアンドロイドは寿命という最後の欠点すらなくなってきている。
かくして、前時代では、≪短命のスペシャリスト≫に過ぎなかったアンドロイドは、電脳の存在により、≪全能のスペシャリスト≫となった。

かくしてこの新時代において、アンドロイドは新しいステージへと来ているのかもしれない。

―――そう、人類の無垢な奉仕者から、新たなる霊長へと進歩する、その時代へと……。


◆◇◆◇


「というわけで、お前はそんなアンドロイドの中でも、特に高性能なんだ。
 だから、ちょっとがんばれば、すぐにその位の相手をやっつけられるはずだ」

「無理無理無理無理!ムリです!
 わ、私戦闘なんて一回もやったないですもぉぉん!!」

かくして現在私たちがいるのは、チャレンジャーギルドの特別訓練室。
そこで件の角付きアンドロイドの性能チェックを行っていた。
今回の相手は、チャレンジャーギルドの模擬戦闘教官ロボット【やったる君Lv7】。
一般的な戦闘アンドロイドと同程度の戦闘能力を持っている自動戦闘ロボットであり、サイボーグでも苦戦は必須。一般人なら負け確定。
しかし、荒事のできるチャレンジャーならこれくらいは倒せておきたい。そんな絶妙な強さを持つ自動機械である。

「というか、今回の試験はお前の命名権もかかっているんだからな?
 このままだと、お前の名前は一生【ミドリノ・ムシコ】になっちまうぞ。
 ほら、がんばれ♪がんばれ♪」

「そ、それはいやです!
 で、でも、流石にこれは相手が強すぎて……んびゃ!!」

遮蔽物に隠れ続けていた角付きだが、無事にやったる君が弾幕を張ったまま急接近。
そのまま彼女の顔にゴム弾を15発当てて、死亡判定。
無事に角付きに黒星を付けて、試合を終了させるのであった。
うん、あいつがもし只の人間なら鼻の骨バキバキになってるだろうなぁ。

「い、痛いれふ……。
 お星さまが、お星さまがキラキラしてまふ……」

まぁ、でもそれでもあいつはアンドロイドとかサイボーグなのだろう。

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