第013話:戦い本番への助走
先ごろ着任したばかりで、今回も富士光子力プラント奪還作戦の陣頭指揮を執っていた極東支部新司令官、アキラ・キャンベル大将が、『わたし』たちを名目上率いている事になっている車弁慶少佐と敬礼を交わしていた。無論、映像スクリーンに映った画像の中での話である。『わたし』は現場に行くわけにもいかないしな。
弁慶も戦士としての働きだけではなく、こういう仕事をさせてしまうのは申し訳なく思うが。だが他にできる人もいないから、仕方がない。シロウが呟く。
「へぇ……。あれがアキラ・キャンベル大将かよ」
『ああ、大した人物の様だよ。今の朽ちかけた連邦軍を、なんとか保たせているごく少数の将官の1人だ。まあ大将だからな。極東支部新司令官は緊急の兼任で、もっと高い地位の職責も多数あるらしいが。
現在彼の手配で……』
『わたし』はシグコン・シップ艦橋主スクリーンの映像を切り替える。その映像では、シグコン・シップに次々と運び込まれるグレートマジンガー関係の装備類が映し出されていた。
『……彼の手配で、グレートブースターも搬入されている。グレートマジンガーと鉄也は、シロー君ともども正式に弁慶の下に出向となった。今は鉄也は心配かけた奥さんのところに、シロー君を連れて顔出しに行っているがな。
それと、キャンベル大将は他にも特殊な物資を提供してくれている』
「こ、こりゃあ……!!」
主スクリーンの映像を分割して、わたしはキャンベル大将がこちらに提供してくれた物資のリストを表示した。それを見たシロウが、素っ頓狂な声を上げる。
それはそうだろう。その物資の中に、ヒュッケバインNext用の追加装備が幾つも入っていたのだ。
『ヒュッケバインNextが、こちらの戦列の中に参戦しているのを見たんだろうな。引退して政界に転じてなお連邦軍内に影響力を持っている、地球連邦議会ゴップ議長の強力な後押しを得て、軍内の政敵の派閥に圧力をかけてヒュッケバインNext関係の備品を洗いざらいかっぱらって来てくれた様だ』
「どうせなら、第13NT研究所も潰してくれりゃ本気でありがたいんだがよぉ」
『それに関しても、彼は動いている様だ。ただ、流石にそちらはなかなか難しい模様だな。あちらには腐った連中が後ろ盾になっている。『単なる機動兵器』であるヒュッケバインNextに関しては、そこまで厳しくなかった模様だ。
ただ『わたし』としては、この世界で創れる強化人間よりも、ヒュッケバインNextの方が下手をするとヤバいシロモノだと思うんだが』
「へ? ヒュッケバインNextって、連邦軍の最新兵器か何かじゃなかったのか?」
『違う様だ。詳しい事は不明だが、構成素材や使われている技術体系からして、『わたし』の同類ではないか、と『わたし』は考えている。連邦軍やその研究施設では分析できずに、オーパーツとして封印して放り出す直前だった様だが』
シロウの表情が厳しく顰められる。
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