ぼくはヒーローじゃない
後日、サクモは火影室にいた。
「サクモよ、具合はもう良いのか」
「はっ! ご迷惑をおかけし、申し訳ありませんでした」
「ならよい。お主に任せたい任務がある。なに、病み上がりだからそう重たくないものにしてある。誰か下忍とのツーマンセルにしようと思っておるが……」
「あの……」
口ごもるサクモに三代目は優しく問いかけた。
「ん? どうした?」
「もしもその下忍、まだ決まっていないようでしたら“まるほしコスケ”さんに頼めないでしょうか?」
「なんと、コスケか……お主、あの者と任務したことはあったかの?」
「一度だけ、フォーマンセルの一員でした」
「そうであったか……うむ、分かった。お主とコスケに頼もう」
「ありがとうございます!」
「……では任務の詳細を話そう」
サクモに任された任務はそう難しいものではなかった。
正直、中忍と下忍の組み合わせでもうまく行くだろう。
「コスケさんですね。以前、一度ご一緒したことのあるはたけサクモです。よろしくお願いします」
「勿論、覚えておりますよ。どうぞよろしくお願いします」
任務は国境を守る忍たちに封書を届けることだった。
通常であればCランク任務であるが、他国の忍が国境を侵害して来る可能性も考え、Bランク任務となっていた。
サクモはコスケと共に里を発ってから驚いた。
朝に動きの確認をしたとは言え、家に籠っていた時とは比べ物にならないくらいに身体が軽かったからだ。
国境までは数日かかる。
途中、コスケの作った料理で休憩となった。
「あの、コスケさん。あなたの動きはどう見ても下忍レベルではない。どうして上忍にならないのですか?」
「ほっほっほ。木ノ葉の英雄、白い牙にそう仰っていただけるとは光栄ですな」
任務失敗して以来、サクモは“木ノ葉の白い牙”という呼び名に重責を感じていた。
彼を蔑む人は皆、その呼び名を口にしていたからだ。
だが、コスケからは純粋な好意を感じ、ホッとした。
コスケが三代目と同じ年頃、40代後半だからだろうか。
30代前半のサクモは下忍の彼に話しやすさを感じていた。
「そうですなぁ……かれこれ30年前のことです」
コスケは自らの椀に雑炊を注ぎつつ、口を開いた。
「ワシはまだ若かった。中忍になろうと功を焦ったばかりに無茶な命令をし、そのせいで大切な仲間を死なせてしまいました。その日から、ワシは一生下忍でいることを二代目火影様に誓いました。下忍でいることは償いでもあります。それに、最近の下忍は子供が多いですからな。ワシのような年寄りがやった方が良い任務もありますから」
「そうだったのですか……」
沈黙が訪れ、パチパチと焚火の音がした。
サクモもコスケも腰掛け、焚火を眺めていた。
「失礼ながら、サクモさん。任務を失敗なさったと聞きました」
「ええ。恥ずかしながら」
「詳しい話は分かりません。ですが、これだけは分かります。あなたはワシと違って仲間の命を守った。部下の命を」
「…………だからと言って、里に損失を出したことは許されません」
「二代目様から頂いたお言葉、今でも覚えております。償いは生き抜いたその先でしろ、と」
[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/5
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク