トビラ、うちはの身体を知る
うちは一族の代名詞は二つある。
一つは血継限界“写輪眼”。
そしてもう一つは質の高い火遁の術。
「“火遁・豪火球の術”!」
水上に繰り出す橋の上でオビトが印を結び、術を発動した。
が、口から出たのは両手で包める程度の炎。
オビトは不服さを誤魔化すように笑った。
「へっま、まあ初めてだからな……すぐに大人たちみてーにすげー炎を出して見せるぜ。トビラ、お前もやってみろよ。印は分かるよな?」
「ああ」
――うちは一族と戦うため、研究はずっとしてきた。だがまさか己の身体で試すことになろうとはな。
「“火遁・豪火球の術”!」
扉間時代の感覚でチャクラコントロールをし、術を発動させた。
だが、うちはの身体は存外に火遁と相性が良いらしい。
「うっうわぁああ! トビラ、おまっすっげーな!」
想像以上の炎が水上を覆った。
途端に身体からチャクラがごっそりと無くなったのをトビラは感じた。
――クソっまずいな……!
「ん? おい、トビラ! どうした? トビラ!」
チャクラが枯渇したトビラの身体はゆっくりと倒れていった。
顔じゅうが濡れている不快感にトビラは目覚めた。
目の前一杯に広がるのは兄の泣き顔。
「……兄さん?」
「トビラ! 起きたか! よ、良かったぁ……! ばあちゃん! トビラが起きた!」
「ああ、良かった。ほらオビト、顔をお上げなさい。トビラの顔を拭いてあげようね」
起き上がったトビラの顔にタオルが押し付けられた。
トビラは自分の顔を拭いた後、抱き着くオビトの顔も拭いてやった。
「泣くな、兄さん。たかがチャクラ切れだろうが」
「たかがじゃねーよ! お前、急に倒れて俺がどれだけ心配したか分かってんのかっ?!」
「悪かったよ。まさかあんなにチャクラを使うとは思わなかったから。感覚は掴めたからもうあんなことにはならない」
心配をかけた自覚はあるのでトビラは素直に謝った。
「君」
声をかけられ、その時初めてトビラは家にオビトと祖母以外の人物がいることに気づいた。
部屋の隅に立っていたのはうちはの青年だ。上忍ベストを纏っている。
「トビラ、こちらのフガク殿があなたをここまで運んでくれたんぞよ。お礼を言いなさい」
「うちはフガク……族長の息子か。世話になったな。ありがとう」
「ああ」
フガクはそのまま尋ねた。
「あの火遁を使うのは今日が初めてと聞いたが本当か?」
「そうだ」
「それであの火力……やはり血筋か」
「血筋? うちはの血ということか?」
「……そうだな。君たち、アカデミーには入っているのか?」
「来期に入る予定だ」
「そうか。うちは一族の名に恥じぬ働きを期待している」
フガクはそう言い、トビラたちの家を出た。
帰り際、祖母がもう一度深々とお辞儀をしていたが、彼は頷くだけでそれ以上の言葉を返さなかった。
フガクが話し始めてから静かだったオビトがニッと笑いながらトビラの頭を撫でた。
「トビラ、お前まーた倒れやがって! ったく、俺とばあちゃんをあんまり心配させるなよ!」
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