ハーメルン
やはり俺がシャドーガーデンにいるのは間違っている ver.1.8
第二話 どうやら、俺の知らないところで何かが動いている。


理不尽にも主従を結んでしまった後、俺はそのまま寮への帰り道についた。

馬車に揺られ、待ちゆく人々の顔を見ているとこの国がどれだけ恵まれているのかがわかる。
道路が整備されているのも、そんな恵みの表れの一つだ。
今俺が揺られているこの馬車だって、その絶え間なる技術によって気持ちが良い程度の揺れに収まっている。

もう時間帯としては夜。
俺と同じく帰路につく中には家族連れやカップルなんかもいる。
街頭に照らされる彼ら彼女らは、この街の雰囲気自体を明るくさせていた。
それらを一瞥し、改めて今日も疲れたと肘掛けに体重をかける。

王女はあんなんだが、それでも彼女ならばこの国を守れるのだろうと思う。
間違っても王国最強と言われている彼女。
頼むから私的にそれを運用しないでほしい。
マジで被害者が出る。

まあ、そのために妹もいる。
アレクシアも、少なくとも外聞はいいからそれなりに国を収められるはずだ。
なんだかんだで仲はよかった思う。
よかった、、、?

どうなんだろ。

そういえば最近アレクシアの様子をあまり見ない。
かつては結構一緒にいたイメージがあったのだが、いつ頃からだろうか、その背中を追っている光景がなくなった。
あの姉を目指してます!って感じ可愛かったんだけどなぁ。
だが、その手のやつはどこかで絶望するのが落ちと相場が決まっている。
分からんが、似たようなやつをどこかで見た気が、、、う、頭がっ。

そうして、俺のあったかもしれない前世に思いを馳せていると馬車の動きが止まる。

どうやら寮についたらしい。

送ってくれた人に一言言って、早速寮へと向かう。
ミシミシと音のなるちょっとだけ使い古された匂いのする階段を上がり、俺の部屋へと一直線。
さーて、今日の飯は何にしようかと思いながらドアノブを回すと──?

この扉は鍵がついている。
学生寮として必要最低限の配慮だろう。
それなら、俺は鍵を締め忘れたか?
いや、たしかに今朝出るときは鍵を締めたはずだ。
あまり見られてはいけないものもあるから、鍵の確認は毎日怠っていないはず。

なのに、空いている。
ということは──

「ねぇ、聞いてよヤハタ!」

バタン!

中から突然シドが飛び出してきた。
だから──閉めた。

カチャリ。

だから──締めた。

今日は宿泊まりか。
まあ、たまにはそういうのも悪くないよな。
夕食を考える必要はなくなり、美味いものが食べられるとなって少しだけ上機嫌になる。

面倒くさいものから逃げるのは社会人の必須スキルだ。
俺もこれから就職し、立派な社会人となるのだから厄介事からは逃げるべき。

彼の鼻歌は、中から聞こえる「いてっっ」という声をかき消した。



「なんで無視したんだよ」

次の日、いつもどおり一人で優雅に昼飯を食べていたところシドに呼び出された。
喧騒がたえない食堂。
俺たちのような貴族から王族までいるというのだから、ここはかなり珍しい学校と言えるだろう。
ちらりと何を食べているかと見てみると、1980ゼニーの貧乏貴族ランチ。

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