雷神
ルーデウスはゆっくりと空から騎士団を睥睨していた。
と、ゆっくりと浮かびながら、屋敷の1点に目をとめる。
そこにはザノバの死体があった。
ひゅっ。
まるで瞬間移動したかのような速度でルーデウスがザノバの死体の横に降り立った。
近くにいる騎士たちは身じろぎもできなかった。
まるで、動いた瞬間、声を出した瞬間に何かの緊張がはじけ飛び、取り返しの付かないことになるかのように。
「――ザノバ」
ルーデウスはそっと腰をかがめると、未だ燃え続けるザノバの死体の顔辺りに手を伸ばした。
……じゅっ。
炎に焼かれる音が響く。
ルーデウスは自身の手が焼けるのも構わずにザノバの顔に手をあてた。
「――ジュリ」
次いで、ザノバの死体のすぐ側に倒れていた小さな死体に手をあてる。
「――ジンジャー」
続けてその後ろに倒れる女性の死体の頭に。
「――アイシャ」
最期は美しい女性だった。
袈裟懸けに斬られた傷からはおびただしい血が流れた後がある。
不思議と、穏やかな顔をしているようだった。
微笑んでさえいるようにも見える。
ルーデウスがアイシャと呼んだその女性の遺体を抱える。
「――てめえら」
ここで初めて、ルーデウスが騎士団を見た。
不思議と、彼の声は後方にいる騎士ひとりひとりの耳にまで届いた。
まるで、まるで死を告げる神の声であるかのように。
「――全員殺す」
びりびりと騎士団の身が震える。
それは恐怖だった。
たったひとりの魔術師に、1,000の猛者からなるミリス神聖騎士団が恐怖している。
「う」
「うわああああああああ!!」
悲鳴にも似た声が騎士たちの口から発せられた。
自らを鼓舞する雄叫びのようでいて、恐怖から恐慌をきたしたかのような声でもあった。
改めて、騎士たちは武器を手に取り、ルーデウスに迫る。
ルーデウスはアイシャの遺体を抱えたまま、彼らを冷然と見返すのだった。
---
「おおおおおおお!!」
手に剣を、あるいは槍を持った騎士団の面々がルーデウスに迫る。
『電撃矢』
ルーデウスが唱えると、彼の背後から雷が巻き起こる。
それが騎士に触れるやいなや、
「ぎゃあぁぁぁっ!」
数人の騎士が吹き飛ばされるように宙を舞った。
合わせて彼らの血が、肉がはじけ飛ぶ。
あまりの高圧電流が流れたが故に、瞬時に血液が沸騰したのだ。
『雷撃沼』
次の魔術をルーデウスが展開すると彼の前方が広範囲に渡り泥沼と化した。
なすすべもなく引き込まれる数十人の騎士たち。
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