ハーメルン
老デウスの物語
人神

ナナホシの一件から、さらに5年ほど経過した。

俺は28歳。
アイシャは22歳になり、花のような美しさを手に入れていた。
この世界では22歳はもう結婚適齢期も終盤にさしかかるという頃合いだ。

「なぁアイシャ。お前――そろそろ結婚とか考えないのか?」
「んー? あたしは、お兄ちゃんの世話があるからなぁ」

なんて言って全く取り合わない。
アイシャほどの美貌で、しかも家事は万能ときたらどこに出してもはずかしくないのだが。



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俺は相変わらず魔法大学に関わっている。
魔法大学の書籍課の伝手を使って、以前ノルンに書いてもらった絵本『スペルド族の冒険』(ルイジェルド人形付き)を発行したのだが、これがなかなかの売れ行きだった。
魔法三大国の中でしか流通していないが、文字の書き方講座を巻末につけていることもあって、学校に通うこともできない子供の読み書きの練習用に売れているらしい。

また、大学で無詠唱魔術を使用するための講義も始まった。
俺の協力のもと、学生は無詠唱魔術を身につけるべく頑張っている。

これらはアイシャの発案によるものだった。

相変わらずミリス神聖国は俺を神敵として賞金を懸けており、俺の元には暗殺者や賞金稼ぎが時折現れるのだ。
まぁ今のところはたいした強さの者はおらず、皆一撃のもとに倒れている。

しかしいずれ国の威信をかけて強敵を送り込んでくるかもしれない。
また、外交ルートでもラノア王国に俺の引き渡しを要求しているらしい。

そういった事態に対抗するべく、アイシャが考えたのが、ラノア王国にとって、また魔法大学にとって俺が有用な人物であると示すことだった。
俺に利用価値があると考えれば、王国と魔法大学は俺を守るべく動いてくれるだろう。



ザノバの研究はついに実を結んだ。
自動人形の作成だ。
自らの意思を持ち、人間そっくりに話し、行動する。
それでいて主人の指示には絶対服従。

最初ザノバは俺のために――いや、この話はやめよう。

フォーティと名付けられた完成版一号の姉妹機が作られ、魔法三大国に売ることとなった。

力もスピードも並の冒険者以上にあり、何より死を恐れない。
軍事用としてもなかなかの戦力となるんじゃないだろうか。



意外なことに、アイシャがナナホシの研究成果を見たがった。
ナナホシの魔法陣が完成し帰還を待つだけだった状態のため、かねてからの約束通りナナホシは俺に研究成果を渡すため、彼女の積み上げた研究成果をまとめた資料を用意してくれていたのだ。

「んー、なんかさ、お兄ちゃんの役に立つかもしれないって思うんだよね」

アイシャはそう言った。
俺がナナホシと同じ世界から来た転生者であることはアイシャは知らない。
また今さら前の世界に帰るつもりもないのだが。

俺の考えを気にすることもなくアイシャはナナホシの研究成果を読み解いている。
さすがに10年かけてナナホシが積み上げた理論と実践を理解するのは難しいらしく、アイシャは自分でノートを書きながら資料とにらめっこを続けている。

ちなみに俺が読んでもさっぱり分からなかった。


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