ひより’s接待 in茶道部
生徒会に入ってしばらく経った頃。
オレはいつも通り生徒会室の隅で雑務をこなしていた。
初めこそ桐山からグチグチと指導を受けることもあったが
慣れてしまえば楽なもので、今では一人淡々と仕事をこなすことができていた。
そんなオレに生徒会長の堀北学から声がかかる。
「綾小路、今日は一年生と面談予定がある。お前にも同伴してもらいたい」
「断ると言ったら?」
「約束は5分後だ。相談室に移動するぞ」
当然拒否権はないらしい。堀北兄妹はどうもそういった傾向にあるな。
諦めて堀北兄の後に続く。
「生徒の相談を受けるのも立派な仕事だ。お前にも生徒会の一員として色々と仕事を覚えてもらいたい」
この活動がいつか役に立つ日が来るのだろうか。
そう思いつつも、書類業務以外の活動は初めてなので
全く興味がないとは言い切れない。
「失礼します」
相談室で待機していると、ほどなくして扉がノックされ2人の生徒が入ってくる。
「1年Cクラスの椎名ひよりです」
「1年Dクラスの王美雨です」
「生徒会長、今日はお時間頂きありがとうございます」
大人しそうな2人が挨拶を済ませる。
そのうち一人は同じクラスのみーちゃんと呼ばれる生徒だ。
残念ながら話したことはないため、向こうがこちらを認識しているか怪しい。
目が合ったが特に何もリアクションはないことからも疑念は拭えない。
椎名の方は初対面だが、何度か図書館で見かけたことがあり
どちらも学力が優秀な生徒だと記憶している。
というのも、先日南雲がいじっていた資料をこっそり拝借ところ
何故か1、2年生のデータが能力値付きで全生徒分まとめてあったので
全て頭に入れておいた。
生徒会役員として、生徒のことを把握しておくのは大事だと堀北兄も言っていたしな。
「それで早速だが相談内容を聞かせてもらおうか」
堀北兄が淡々と進行する。
橘書記がいないと自分で仕切るんだな。
いや、もしかしてオレが進行しないといけなかったのだろうか。
「はい。実は私たちの所属する茶道部のことで……」
相談内容の要点をまとめると
茶道部の指導員の先生が産休に入ってしまったので代理を探している。
だが、茶道を教えることのできる教員が見つからないため困っているとのことだ。
困っていると言っているが、この場に来たのが1年生だけであることを踏まえると
上級生は問題にしていないのかもしれない。
「ここ数年、茶道部が積極的に活動しているという認識はない。これを機に廃部でも問題ないのだが、お前たちは違う意見ということだな」
堀北兄も似たような考えに至ったのだろう。
「はい、先輩方は廃部でも良いと考えていらっしゃるようですが、私たちは違います。歴史ある茶道部をこんな形で終わらせたくはないのです」
大人しそうな印象の椎名だが、堀北兄を前に物怖じせずにしっかりと回答する。
隣のみーちゃんはオドオドしているだけなので
意外と肝が据わっているのかもしれない。
何かと粗暴なCクラスにいるとメンタルが鍛えられる、とかだったら少し面白い。
「わかった。では、生徒会で実態調査をしたのち、然るべき対応を検討させてもらう」
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