ハーメルン
遠山キンジに転生したので、女の子とイチャイチャする
第四話
……さて、そろそろ来る頃だろうか。
武偵校が見えてきた頃、俺は呑気にそんなことを思う。
これから俺は、武偵殺しの模倣犯である『峰理子』が仕掛けた事件――、チャリジャックに巻き込まれることになる。
俺が今漕いでいる自転車にはプラスチック爆弾が仕掛けられているのだ。乗る前にこっそり確認したので間違いない。
「その チャリには 爆弾 が 仕掛けて ありやがります」
――お、来た来た。
無機質な機械音声が聞こえた方を見ると、そこには短機関銃を装備したセグウェイがいつの間にか並走していた。鈍く光る金属質のその銃口をいきなり突きつけられたら普通はパニックになるだろう。
改めて思うが、理子もエグいことするよな……。
しかし、こうなることを知っていた俺は特に驚くことは無い。寧ろ小説やアニメで見たシーンを実際に体験できていることから興奮しているまである。それにこの程度じゃ俺は死なないしな。
セグウェイに搭載されたスピーカーから、自転車のスピードを下げたり、助けを求めると爆弾を爆発させる旨の説明がなされていく。
俺はそのまま理子の要求に従って大人しく自転車を走らせる。そしていよいよ、運命の場所である女子寮が近づいて来た。
……えーと、確か屋上にいるんだっけ?
――――あ、いた。
女子寮の屋上の淵。そこにいた。
『神崎・H・アリア』が。
正真正銘、この世界のメインヒロイン。
遠目だが、堂々とした姿勢でピンク色のツインテールが風で靡くその姿はやけに様になっていた。アリアは、俺と並走する短機関銃付きのセグウェイを確認すると、何の躊躇も無く飛び降りた。
アリアはそのままパラグライダーを開き、空中で器用に軌道を操り、俺の方に向かってくる。
アリアが近づいてきたことでその容姿もしっかり見えてくる。芸術作品のように整った、そして幼い顔立ちであるものの、集中したその表情はやはり一流の武偵であった。
アリアが太ももに装着したホルスターから素早く二丁の黒と銀の拳銃を抜き、こちらに照準を定めてくる。
その意図を理解した俺は、射線を確保しやすいように素早く頭を下げる。俺のその行動に、少し驚いた表情を浮かべたアリアはそのまま引き金を引く。
轟音が鳴り響くと同時に、アリアによって放たれた銃弾は見事にセグウェイに命中していき、破壊された。
俺もこっちの世界に転生して銃を使っているから分かる。不安定なパラグライダーから二丁の拳銃打ちで命中させることの難易度が。このような曲芸じみた所業を易々とこなすのがアリアなのだ。
……改めて思うとおっかないな。
アリアは拳銃をホルスターに収めると、今度は俺の方に並走する形で飛んで来る。
「感謝する! この自転車には爆弾が仕掛けられている。減速すると爆発する仕組みだ!」
俺は慌てることなく簡潔に状況をアリアに伝える。武偵として緊急の状況における素早い情報共有は当然のこと。アリアに俺ができる奴だとアピールしておくことは大事だ。『対等』なビジネスパートナーになる訳だからな。
できる奴なら、こんな事件に巻き込まれないだろ、なんて突っ込みは受け付けない。
アリアは、「……」と、一瞬何かを考える様子を見せるもすぐに切り替える。
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