ハーメルン
ぼっちちゃんを雌にするつもりが雌にされた元男(♀)の話
♯せんこう
私
(
オレ
)
の名前は大張ねこみ。女みてぇな名前……いや、今の“身体は女”なので正しい。
ただし、やはり中身は男、
私
(
オレ
)
は男なんだ。誰がなんと言おうと私は男なんだ……!
本物の野原ひろしっぽくなっちまった……。
ともあれ、私からすりゃ男は恋愛対象にはいらないし、恋愛対象の女の子だってリードしなきゃいけないわけであって、なわけであるが……。
「最近おかしいな……」
私は、“一人暮らしに丁度良い”1Kのアパートの部屋にて頭を抱えた。
カーペットの上に敷いた“
人をダメにするソファ
(
Yogibo
)
”に私は背中を預けて、今までの……正確にはここ10年間の自らのことを深く思考する。
後藤ひとりと出会って、そこから今に至るまでの経緯を、だ。
―――そもそもだ。私はひとりと上手くやってたはずだ。なんならパーフェクト。
「にも関わらず、なぜ……」
ひとり相手にどうもたじたじになっちゃうし、挙句に学祭じゃ……あ、あっ、あ……あんなことにっ。
そう、思い出すのは学祭の時の“アレ”だ。
「あ、あっ……あ゛ぁ゛あ゛ぁぁぁ~~~っ!」
うつ伏せになって、ソファに顔をうずめて絶叫。両足をバタバタして羞恥に悶えている。
それぐらいさせてもらわないと心が持たない。
―――ひ、ひとりとその、き、キスをしてしまったのは、まだいい、良いんだが、問題はそちらじゃない……。
「なんなんだろぉなぁ、ホント……男らしくなぃ」
ひとりをリードしてなんぼだと思ってたが、上手くいかない。
なんなら“原作”を知ってるぶん、リードする以外に選択肢なんてない、なんて思っていたのに蓋を開ければこれ、最近は私の方がひとりに……な感じだ。
ナンパから助けられたり、こけそうになったのを受け止められたり……そもそも、その前ぐらいから一緒に歩いてたらさりげなく道路側歩かれたりっ、重そうなもの運んでたら手伝ってもらっちゃったり……あと学祭のあとの結束バンドと星歌さんときくりさんとの打ち上げに参加すれば、“あの事故”のせいでひとりに話しかけ辛い思いしてた私に気を遣って、先に話しかけてくれたり!
納得いかない。これは納得いかない。バランスが取れてない!
―――真島さんもバランス取らなきゃって言ってただろぉがッ!
だがふと、無意識に、自分の唇に触れる。
「でも、最近かっこいぃんだよなぁ、ひとりぃ……」
……って!!?
「何言ってんだ
私
(
オレ
)
ぇぇぇっ!? あ゛ぁ゛~!」
再びソファに顔をうずめて叫ぶ。
とても普段使いできないような汚ねぇ声だとは思うが、仕方ないことだろう。先に出た自分の声じゃないみたいな声で呟いてしまった気恥ずかしさのせいだ。反動で汚い声を出してプラマイゼロにしようという……やはり錯乱している思考。
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