1話 カフェ「Cruinne」
「喫茶店はいいものだ。」
注文したアールグレイを飲みながら、俺はしみじみと思う。
普通の飲食店とは違う落ち着いた雰囲気。
飲食を楽しむお客たちも、騒がずそれぞれがこの雰囲気を楽しんでいる。
元々、在宅作業をこなす中で家以外の作業場所を求め行きついたのが、このカフェ「Cruinne」なのだが、このクラシックな店内にすっかり魅了され、休日も店に食後の1杯を飲みに来るようになった。
そうして、半年以上も店の常連を続けていると、店主はもちろん、他の常連とも顔なじみになってくる。
俺は元々、1人でゆったりとした時間を楽しむタイプの人間ではあるが、こうしてどこの誰とも知らない顔なじみたちと、とりとめのない話をするのも、好きな時間である。
今日店でたまたま出会った顔なじみは・・・・・・・・「宇宙人」だった。
「なあ、高宮よお。俺はつくづく思うんだよ。やっぱ地球人っておかしいよな?」
高宮 凛が俺の名だ。
女みたいな名前をしているが、れっきとしたおっさんである。
「いや、スカル。いきなりご挨拶だな。
俺からすれば、人間に紛れて生活するお前の方がよっぽど珍しいのだが。
あれか?俺が知らないだけで、社会にはお前みたいな宇宙人はあふれてるのか?」
スカル。俺はそう呼んではいるが、自己紹介された時うまく聞き取れず、暫定的にそう呼んでいる。
社会人としての偽名はあるそうだが、そっちは秘密だそうだ。
本人?曰く、日本社会に紛れている宇宙人の1人とのこと。
「だってよー。宇宙的にみても人間って結構発達してるぜ?
俺たち宇宙人がこうして、物資を輸入したくなるくらいにはいいもの作りやがる。
それなのに、政府も科学者も俺たちの存在すら認知できてねえ。
なんか中途半端というかあやふやというか、進化の仕方おかしくねえ?」
一介のサラリーマンに政治家や科学者でも無理な話をされても困るのだが、その前に今の話で以前から気になっていたことに触れられたのでこいつに聞いてみる。
「以前から気になっていたんだがスカルよ。お前ら宇宙人は地球の何を輸入しているんだ?
作るというからには、人工物だろう?こうして惑星間を移動しているあたり、お前らの方が発展していると思うのだが。」
こいつは見た目30代の日本人男性だが、れっきとした宇宙人であり、この姿は仮のものでしかない。
そんな、大怪盗も真っ青なフェイク技術や何より惑星間での移動まで可能な航行技術など、それこそ人間なんぞより優れた科学力があるはずなのだ。
そんな、SFじみた連中が一体地球で何を仕入れているのか、以前から気になっていた。
「んー?鉱物って言えばいいかな?それも自然にある奴じゃなくて人工の加工された奴」
「鉱物?宝石とかか?人工のものは近年に入ってから作られたそうだが」
人工蛍石やビジマス鉱石など、見た目も綺麗なものを思い浮かべる。
宇宙では、こういった宝石類が貴重なのだろうか?
「いや、違う違う。そういう宝石類じゃなくてセラミックみたいな金属系。
車とか舟とか乗り物に使うの全般を仕入れてる」
「はあ?それこそ必要ないだろう?お前らがどうやって地球に来てるのか知らないけど、UFO?地球でいう宇宙船みたいなのだってあるだろう?」
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