ハーメルン
カードゲームもできる乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど、そんなことよりデュエルがしたい
4 治療決闘
ドローの素振りを1時間で百回行いました。
「怪我が治ってないのですから、大人しくしてください」
「怪我なんて治してる暇があったら、ドローの素振りをやったほうがいいです」
「お言葉ですがドローの素振りをして怪我が治る〜なんてのは迷信ですよ」
医学的にドローの素振りに治療効果があるとが認められるのは、ソウコ・メッセルが15歳になってからである。流石に右腕でするのは無理なのでまだマシな方の左腕でドローの素振りをし続ける。
勢いよく扉が開いた。またお父様か。
「全身火傷してるじゃないか。わしのかわいいソウコをこんな酷い目に合わせおって。合わせたやつは許せない」
「裏山で焼き芋でもしようと思ったら火が強すぎてこうなりましたの」
お父様が犯人を探したら、あの盗賊団は確実に殺される。リベンジされる前に死なれては困るので、嘘をつくしかない。
お父様に肩を掴まれる。
「なぜ、調理担当に、頼まなかったんだ。危ないじゃないか」
「ちょっとしたわがままですの。焼き芋は自分で焼いた方が美味しいと聞きまして」
「次からは止めなさい。怪我をするからね。なぜ誰も止めなかったんだ」
「お嬢様は…素直に言って聞くような人ではありませんので」
愛を感じる。愛を感じるだけに前世という不純物があるのが申し訳なく思う。お父様の愛するソウコと私は違うから。
ドローの素振りの速度を上げたので、左腕が完治した。
「さっきからなにドローの素振りをしているんだ。止めなさい。傷口が広がるだろう」
「ドローをすると怪我が治るのです。火傷を負っていた左腕もほらこの通り」
左腕の包帯を取ると、怪我一つない左腕があった。
お父様は困惑を隠せないでいる。
「そ、そうか。それなら良かった。今度は怪我しないように芋を焼くんだぞ」
「承知しました」
お父様が出ていった。
6日後…トゥスル王子が来た。
「こんな見苦しい姿で申し訳ございません」
「思ったより元気そうで良かったです。何しろ本当はケガしてないんじゃないかと一瞬思ったほどで。……忙しく様子を見ることが出来ず申し訳ございませんでした」
「忙しいのなら仕方ありませんわ。何と言っても王族ですものね」
プライムディスティニーでは素振り治療は50%で一週間で大怪我や虫歯や五月病等の病気を治せる上に体力を大幅回復する効果があった。ゲーム時間で3年は使えないということを除けば欠点がない。
効能により、左腕に軽いやけどがある程度になっている。
「これも素振り治療の効能ですわ」
「え、あれ生存者バイアスじゃなかったんですか?」
「左腕の火傷も決闘を行えば治るはずです。早速いたしましょうか」
素振りごときで怪我が治るなら、決闘でも治らなければおかしいのに決闘じゃ治らないだろという風潮があり、民間治療の域を出なかったのです。
決闘で怪我が治らないというのにせがんだ理由は私がただ決闘したいだけ。
「お医者様から暫くは決闘を控えておくように言われているのです」
「そうですか。リベンジはしばらく先になりそうですね」
「しかし決闘させないというのもゴネそうなので、代わりの者を」
「随分と用意がいいですわね。決闘好きになったのはつい最近のことですのに」
「決闘中に気絶しても決闘を好きでいられる人間は元から決闘が好きな人だけですよ」
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