蒼い炎
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」
とある広場。
遠目に多くの生徒たちに囲まれている中、桃色の髪の少女が指揮棒のような杖を振り上げる。
既に周囲は魔法の失敗によって地面がえぐれ、少女自身も服の端々が焼けていた。
失敗する度に周りの生徒達から野次が飛んできたが、今はもうソレすらない。
次でラストだ。
これで成功しなくては留年決定。
監督役の教師からそう宣言された以上、ミスはもう許されない。
桃色の少女ルイズはヤケクソ気味に、感情の吐露に近い形で呪文を唱えた。
「世界のどこかに存在する私に相応しい使い魔よ! 強く、美しく、恐ろしい存在よ! 今ここに現れよ!!」
渾身の気合で振り下ろされた杖。
同時に大きな爆発が起き、続いて炎が巻き起こった。
蒼い炎。
幻想的な色合いは、見るものをうっとりとさせる美しさがある。
しかし同時に、恐怖感を煽るような、不吉さもその炎には存在していた。
「な、何なのよ……? 何が起きてるのよ!?」
思わずへたり込んで叫ぶルイズ。
そんな彼女に監督役の教師、コルベールが近づいてくる。
彼はルイズの安否を確かめながら、炎に注意深く目を向けていた。
「こ、コルベール先生……。これは、どういうことなのでしょうか……?」
「私にもわかりません。ですが、これから使い魔が召喚されるのかもしれません」
「そ、そうですか……」
彼女は素直に喜べなかった。
見たことのないような、派手な召喚方法。
これから召喚されるであろう使い魔は、きっとどの使い魔よりも素晴らしい筈。
そんな確信とも言える思いをとは裏腹に、彼女は炎の主であろう使い魔に恐怖を抱いた。
そして、ついに炎が晴れ、中より『彼』は姿を現す――。
「・・・」
だが、目の前に現れたのは仰向けに寝ている少年だった。
「………え?」
感極まっていたはずのルイズは驚き、信じられず呆然とした。
「ぅわああぁぁあぁ!!?」
一人の生徒が叫び声をあげた。
ルイズは未だに、呆けていたが、周囲の様子のおかしさに気づき、辺りを見回した。
キャーキャーという甲高い悲鳴が波紋のように広がっていく。
いつもとは反応が違う。一体、何が召喚されたのか……。
「……ェール。ミス・ヴァリエール!」
ハッと、現実に引き戻された。
「あなたはここで待機していなさい。私は他の生徒達を教室につれていきます。良いですね?」
「は、はい。ミスタ・コルベー……!!?」
上の空の返事をしようとした途端、ルイズが突然痛みを訴えた。
「い、だぁっ……!?」
彼女の左腕に走る痛みと熱。
例えるなら、焼き鏝で焼かれるかのような苦痛。
無論、そのような感覚は今まで味わったこともない。
そのまま転げまわりたかったが、そうする前に熱は消えた。
痛みの原因と左手の無事を確かめる為、甲を抑えていた右手をゆっくりと離す。
そこには文字が刻まれていた。
「う…嘘……!?」
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