『悪魔憑き』との遭遇
以前、鍛錬や勉強や付き合いの日々を送っているといった。うん、嘘は言ってない。
確かにそんな平凡な日々を過ごしている……日中は。
僕は毎晩こっそり家を抜け出している。理由は本気の鍛錬と将来の小遣い稼ぎのためだ。
父や姉の前で俺TUEEEをすると、姉との後継者争いが起きるかもといった厄介ごとが起きるかもしれないから手は抜いていた。だが、やっぱり前世を含め長年の修行の成果を試してみたいという気持ちは俺の中で燻っていた。
それに姉が家を継ぐとなると遅かれ早かれ、家を出なければいけない。僕の未熟な見識でも明らかにブラコンの気がある我が姉がそれを認めるかはともかく、実家にいつまでもというのは世間体も悪い。
だが弱小貴族の我が家の支援をあまり当てにはできないということで、将来の独立資金のためにも今のうちに準備することにした。
そこで魔力による超回復による独自睡眠法により、深夜に自由時間を設けることができていたのを利用して、近くの盗賊を蹂躙して金品を巻き上げていた。
特に最近、近くの廃村にそこそこの規模の盗賊の一団が住み着いたのを確認したので、久しぶりに大規模訓練ができる。まだ現代日本に比べると治安が悪いこの世界では野盗はゴキブリよりマシだが尽きることがない。それでもこの規模の盗賊は年に一度くらいなので、個人的に楽しみである。
特に今回は最近の研究成果であるスライム製の戦闘服と武器の試験も兼ねている。
なぜスライム製かというと、この世界の魔力の伝導効率が影響する。普通の鉄剣で一割、魔力が通りやすいミスリルの、高級品でさえやっと五割である。これでは無駄が多すぎる。
そこで僕は考えた末にスライムに目をつけた。魔力による形状変化と移動を行うこの魔法生物のコアを潰し、遺体のゼリーを調べたところ99パーセントとほぼロスが出なかったのだ。
そのため周辺のスライムが全滅するまで研究し、つい先日扱いやすさと強度が両立したスライムゼリーの開発とその防具化に成功したのだ。鎧と違って軽く音も立てない、そして魔力を使えば鎧より頑丈。
正直今までこんな便利なものを発明されてないのが奇跡に思える。それほどの逸品だ。
今は試験品なので無粋なボディスーツだが、暇な時にデザインについても研究してみよう。
目的地の廃村に着くと、盗賊たちは深夜に宴会をしていた。盗賊稼業は基本的に獲物を襲えなくては飢える自転車操業だ。
それがこんな深夜に羽振りよく宴会ということは、襲撃に成功した直後だろう。なら僕の収穫も期待できる。襲ってから時間が経つほど、略奪品が生活必需品に変わり消費されるからな。
奇襲するとスライムスーツの実験にならないので、僕は自然体に盗賊に近づく。
「こんばんは、盗賊団」
僕の声を聞いた盗賊たちが僕を見る。全員が急に現れた僕に、「誰だこいつ」という表情をする。
「なんだ、このチビ?」
チビか。まあ、10歳だし当然だろう。
「こんな夜遅くに宴会とは羽振りが良くて羨ましい。だから、皆さんの全財産と命をくれませんか?」
そういうと同時に盗賊に素早く接近し、僕をチビと言った盗賊に回し蹴りを喰らわせる。
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