ハーメルン
HIGH SCHOOL DETECTIVE サクラの彼ら
第4話 犠牲
2047年5月19日 午前11時01分、日本皇国 新江戸府 浜崎市 赤先町7 赤先商店街。
日曜日、快晴の商店街の中、夢川、琉田、戸坂、永合の4人は人混みを掻き分けて走る。
「すいません、警察です! 通してください!」
「ちょっと通りますよ!」
夢川と琉田が叫び、4人は商店街の一角に建つ宝石店「ジュエリー牧原」の前にたどり着いた。群衆を押し退けると、宝石店のショーウィンドウに穴が開いていた。
「浜崎署の夢川です」
夢川は、店先に立っていた女性に警察手帳を見せる。すると、女性は窓ガラスの穴を指差した。
「刑事さん、ここです」
それを見上げる琉田は呟く。
「これで3件目ですよ、夢川先輩」
「分かってるよ」
その背後で、戸坂は無線機のマイクのボタンを押していた。
「こちら桜見608、7丁目の宝石店がやられました」
2047年5月19日 午前11時02分、日本皇国 新江戸府 浜崎市 城先町5-2-5 浜崎警察署3階 刑事課室。
「了解。浜崎署から赤先商店街の各移動へ、7丁目の宝石店にて被害発生。いいか、マル被は赤先商店街から出ていないんだ、絶対に捕まえろ!」
無線機のマイクを掴む八洲が叫び、その後ろでは道島や伊奈本、そしてベージュ髪ロングヘアの少女ーー桜見高校 3年風紀委員会 委員長の信田 紗綾監視員ーーが長机の上に広げた赤先商店街の地図に赤ペンで印を付けていた。
「この30分で、3件もガラスを割ってますね」
赤ペンの蓋を閉じる道島が呟き、伊奈本と信田は頷く。
「でも、赤先商店街から逃げる事はしないし、何のメッセージも無い。何が目的だろうね?」
伊奈本が信田に訊ねると、彼女は首を傾げる。
「何だろうね?」
一方で、新条は八洲の手からマイクを引ったくり、叫んだ。
「ホシは赤先商店街から一歩も出てないのよ! 一体何やってるの!? さっさと逮捕しなさい!」
2047年5月19日 午前11時03分、日本皇国 新江戸府 浜崎市 赤先町2 赤先商店街。
路地裏に停車していた、桜見303号車のゴールドツートン色の2ドアノッチバッククーペ・丹生館 パンテーラ3.0ブレンネロ(UF31AZ2後期型)の助手席で、倉田は無線機から聞こえた新条の大声に首を竦める。
「桜見303、了解」
それだけ言って、倉田はマイクを戻す。その隣の運転席に座る新山は、辺りを見渡しながら口を開く。
「一体何考えてんスかね? ショーウィンドウを割るだけ割って、逃げもせず、メッセージも残さず」
それを聞いた倉田は、新山に質問を返す。
「あんた、やさぐれた時はどうするんだ?」
「そりゃあ、盗んだバイクで走り出したり、校舎裏でタバコ吸ったり……」
そこで、新山は何かを思いついたように指パッチンをした。
「反抗期!」
倉田も指パッチンを返す。
「そうそれ。ってか、古臭くない? あと、タバコ吸ってんの?」
倉田の問い掛けに、新山は冷や汗を流しながら答える。
「やだなぁ姐さん。アタシゃ、健康優良不良少女っスよ? タバコなんて健康に悪い物吸わないっスよ」
「ふーん?」
そう言いながら、倉田はダッシュボード中央に埋め込まれたカーナビゲーションシステムの下のトレイを開く。そこには、備え付けの灰皿が組み込まれているが、何本もの吸殻が入っていた。
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