ハーメルン
かくして少年は迷宮を駆ける ~勇者も魔王も神も殴る羽目になった凡庸なる少年の話~
冒険者(もどき)にはなれたけど②
黄金不死鳥 グリード支部
現在イスラリア大陸からウエストリア大陸の二大大陸をまたにかけて活動する巨大商会。古くは数百年前の迷宮大乱立時代から続く歴史ある商会であり、様々な商売を手掛け多くの利益を得ているというが、彼らの主な商売は“金貸し”だった。
冒険者たちへの融資を行う事で不死鳥は有名だった。
本来、冒険者なんてものは安定性から最も遠い職業であり、ギャンブルと大差ないようなもので、迷宮という
安
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があっても次の日には死んでいてもおかしくない。“指輪持ち”であっても金を借りるのには一苦労なのだから、その信用のなさは相当である。
しかし不死鳥はそんな彼らに金を貸す。そして“きっちりと利益を獲得するのだ”。果たしてどういう嗅覚なのか、冒険者たちを選定し成功するものや、あるいはその懐に“お宝”を隠し持つ者をかぎつけ、そして金を貸し、徴収する。
えげつのないやり口、と呼ばれることも多いが、彼らは大連盟と神殿の法と契約にのっとり、それを破ることはない。キチンと契約をすれば、どうしても入用の時、冒険者たちという職業を考慮せず金を貸してくれるという事で、感謝されることの方がはるかに多かった。
しまいには、「彼らに金を借してもらえた者は大成する」なんて噂まで流れる程であったが、それはおいておこう。
約束を守る者には優しく、違える者には容赦ない。それが黄金不死鳥というギルドだ。
「……ふう」
そのギルドに勤めるガネンという男は、大罪都市グリード支部の新たなる責任者だ。
堅物の大男。冒険者からのし上がったたたき上げ。都市外の迷宮管理をしていたザザが腐敗した折、腐敗の証拠をまとめて上に報告したのも彼であった。出世のためではなく、神殿の逆鱗にすら触れかねぬ暴挙に出たザザを諫め、ギルドを守るための判断だった。
さて、そんな堅物で生真面目、それ故に恨まれることも多く中々出世できない男だったはずなのだが、今回の密告の件で彼は大幅に出世しトップに躍り出てしまった。それまで認められなかった仕事が認められた。しかもその彼を恨むものよりも、支持する者の方が実のところ多くいたのだ。断ることもできなかった。
本来であれば喜ばしい事なのだが、彼には悩みができた。それも二つ。
「ガネン、こっちの報告書はまとめておいたので確認してほしい。今月の集金分は机に」
「お嬢、そんな仕事俺らが……」
「ザザが抜けて人事が大きく動いて、皆新しい自分の仕事を覚えるので手一杯だろう。急場しのぎの穴埋めはするさ。私の判断でこうなったのだから」
ディズ・グラン・フェネクス。
彼がザザの不正の事実を大罪都市プラウディアにある本部ギルドに報告したところやってきたのが彼女である。彼女曰く、「ゴーファ・フェネクスの代理できた」と言っていたが、その名は黄金不死鳥の現トップ、ギルド長の名前である。
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