事前準備
全ては西暦2113年に起こった。土星の各スペースコロニー、土星衛星地表の基地や都市が国家として独立し始めたのだ。
それに対し地球は土星の貴重資源を守り抜くために、火星はテラフォーミングに必要な、主にメタンを確保するべく地球火星連合軍は土星へ艦隊を差し向けた。
こうして土星、主に各衛星地表で激しい戦いが繰り広げられた結果、土星各国家の独立は妨げられた。
しかし、土星各衛星群は独立をあきらめていなかった。
2163年6月7日 土星 ミマス 第3軌道ドック
マッケリー・ミアス整備士はミマス第3軌道ドック第7港へ向かっていた。しかし気分はどこかいつもの時とは違った。他人から見ても分かる程度には。どこか緊張しているようで、しかし高揚とした様子だった。しかし他人から「今日は様子が違うな、いいことがあったのか?」と言われてもマッケリーは「いつもどうりだ」と答えるばかりだった。たった一人、アルト・クロム伍長を除いては。
丁度マッケリーとアルトが出会った。「今日はやけに調子がいいじゃないか、マッケリー」「そりゃあ当たり前だよ、旧式とは言え大型戦闘艦の整備に行けるんだから」
そう、マッケリーにとってある意味記念すべき日だった。なぜならエンケラドゥス警備軍の旗艦、ウィリアム・ハーシェルの見学、、、もとい整備ができるのだから。
「しかし、お偉方は何を考えているんだろうな、各衛星の警備艦隊をわざわざ一箇所に集めるなんてな」アルトがマッケリーに質問をする。「噂では新型艦のテストらしい」マッケリーが答えた。
ここ最近地球火星連合と土星衛星群の対立は再び激化している。
なぜなら土星でも独自で大型艦、それも戦闘艦を建造できる技術力や軌道構造物を手に入れはじめたからだ。地球火星連合は公には海賊対策の一環、という理由で最低でも7割の軌道構造物を明け渡すように土星衛星群に通達しているが、土星衛星群はこれに反発しており、ますます対立が激化しているのである。
「しかし、これからどうなるんだろうな、俺たち」アルトが普段出さない感情、不安感を少しだけ出しながらつぶやいた。「なるようになるさ、きっと長生きできるさ」マッケリーはアルトももちろん、どこか自分にも言い聞かせるように言った。
二人が第7港へ到着するとアルトは「じゃあ艦艇の整備、頑張れよ」とマッケリーに向かって言った。「そちらもな、アルト」二人は別々の通路へ渡っていった。アルトは自分の家、、、もとい艦へ。マッケリーはエンケラドゥス警備軍旗艦ウィリアム・ハーシェルへ。
遠心重力区画を抜けてウィリアム・ハーシェルのもとへ向かうとマッケリーの上司とでもいうべき人物、黒井整備士が待っていた。
「おうマッケリー、遅かったな」威勢のいい声がマッケリーを出迎える。「そうですか?そうは言ってもまだ2時間ありますが、、、」マッケリーは不思議に思いながら返事をした。「それが上の都合でな、時間が繰り上げられてしまってな、もう作業が始まってるんだ」
マッケリーは不思議に思った、そんなに急ぐ必要があるのだろうかと。普通に他の衛星を巡るならあまり急ぐ必要はないはずだと、外大衛星群を除いては。
とりあえず悩んでいても仕方がないと考えたマッケリーはウィリアム・ハーシェルへ向かった。
ウィリアム・ハーシェルの船体にはすでに整備士があちこちで作業をしているのが見受けられた。艦首から見て兵装プラットホームは光学兵装のレーザー照射機の点検や冷却管の整備、VLSへのミサイルの補充、電磁力を用いた弾頭投射システムの電圧のテスト、艦中央では居住区画の点検、食料等の補充、装甲板のチェック、艦後部では機関の調整、装甲と一体化した放熱板の点検が行われていた、マッケリーの担当は、艦後部機関部の調整だ。
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