回想
5年前のある日、エミーはソニックに突然呼び出された。当時からソニックに淡い恋心を寄せていたエミーだったが、ソニックらしくもない切羽詰まった様子に、流石に浮ついたような気分にはなれなかった。
「ソニック!」
「エミー、悪いな、わざわざ来てもらって」
「どうしたの? かなり切羽詰まった様子で電話してきて、着やすい服を持ってきてくれなんて……」
見てもらったほうが早い、とソニックはエミーを自宅の一室に案内した。そこに足を踏み入れたエミーは、眼の前に広がった光景に驚愕することとなる。
「……!」
「見てもらった通りさ」
その部屋に置かれているベッドには、傷だらけの少女が横たわっていた。悪夢を見ているのだろうか、お世辞にも安眠しているとは言い難い苦悶の表情を浮かべている。
「……この子は?」
「いつも通り走ってたら、道端で倒れてるのを見つけた。エミーを呼んだのは、こいつに包帯を巻くのを任せたくてな。オレがやるのは、ちょっと問題があるだろ? 服の下にも傷があるっぽいし」
「なるほど、着やすい服っていうのはこの子に貸してあげてほしい、ってことね……わかった。任せて」
傷だらけの少女を見て、放って置くなどという選択肢はエミーにはなかった。なにより、ソニックからの頼みだ。断るなどという選択肢はない。
そいつでも食べれそうなものを作ってくる、と言ってソニックはエミーに濡れタオルと救急セットを渡して部屋を出ていった。エミーは持ってきたラフなワンピースと渡された救急セットを少女が眠っているベッドの端っこに置く。少女の怪我の具合を見ようと、濡れタオル片手に少女のボロボロな服を脱がすと、エミーは眼の前の光景に、絶句した。
何かに打たれたような傷跡に、殴られた跡、引っ掻き傷など、少女の身体はいたる所まで傷だらけであったのだ。古い傷跡も複数あり、素人目から見ても、少女がまともに治療を受けていなかったことがわかる。
エミーは予想外の光景に戸惑いつつも、手早く少女の身体を濡れタオルで拭き、包帯を巻いていく。その間も、少女は苦痛に満ちた表情で眠っていた。
「一体、なにが……。……って、あれ?」
一通り包帯を巻き終えたエミーの視界の端に、サイドテーブルから何かが落ちていくのが見えた。それは、青いひし形の宝石のきれいなペンダント。ソニックはこんなものを好んで持つことはないし、この少女のものだろうか。エミーは不思議に思った。
あくまで予想でしかないが、この少女は虐待を受けていたのだろう。なのに、何故こんなきれいなペンダントを持っているのだろうか。虐待をする親なら、こんなきれいなものを子供が持っているとあれば取り上げそうなものを……。
「……気にしてても、仕方ないか」
エミーはそう呟きながらペンダントをサイドテーブルに戻した。
翌日。
沢山のフルーツが入ったバスケットと着やすい服を何着か入れた紙袋を持ったエミーは少女の見舞いのためにソニックの家を訪れた。
「Welcome,エミー。あいつなら部屋に居るよ」
ソニックにそう言われ、昨日少女が寝ていた部屋のドアをノックし、ドアを開ける。
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