第五話「影と悪魔」
妹であるクレア・カゲノーから、シド・カゲノーという弟の存在を知った男は、手紙でやり取りをしていた(不本意)自分の弟子である少女へと『シド・カゲノーという生徒について調べろ』という手紙を送った。
それから一週間が経ち、少女からの手紙が届いた。
犯罪者達に襲撃され、シド・カゲノーは教室で斬り殺されたらしい。だが、少女には、それが“あまりにも出来過ぎている”ように感じたらしい。
少女から見て、シド・カゲノーはローズ・オリアナという少女を庇いに自ら駆けたのではなく、斬られたいから駆けたように見えたらしい。
それから体育館に連行されたが、そこからはシャドウガーデンが現れては皆を救ったのだと。
リーダーを除き、その場に居る全員が女であり、また全員がかなりの実力者であったとも。
また、そのリーダーである「シャドウ」はシド・カゲノーと完全に同じ声をしていたらしい。
「…」
手紙が遅かったことに関してはとやかく言わず、男は手紙を読んで思考を始めた。
少女の情報は正しいものであると仮定して考えれば、シド・カゲノーがシャドウガーデンのリーダーである事は確定。
そうであるとして、活動の理由は分からない。
シャドウが、一体何のためにシャドウガーデンという組織を創設したのか。そして、何を理由に活動しているのか。
考え、考え―――男は、
「…聞けば分かるか。」
実力行使という最も速い方法に至った。
「…!」
手紙を閉じた直後―――膨大な魔力の波を、男は感じ取った。
壁に掛けた閻魔刀を掴み、扉からではなく窓から外に出れば、更に強くなり続ける魔力を肌を直に感じる。
あまりにも大きく、津波と大差のない魔力。現代で表すならば、まさしく、核兵器をも越える程のものだ。
男は理解した。その魔力が発生している場所に、男が越えるべき強き者が居るのだと。
「Power... I need more power...」
己の魂、その叫びの言葉を口にし、男は―――『悪魔と化して』、その力の方へと飛び去った。
□ □
「真の最強を、その身に刻め―――I am」
剣を振り下ろし、シャドウを中心とし、紫の奔流による、核爆弾にも並ぶ程の大爆発が
―――起きなかった。
ドゴォォォンッッッッッッ!!!!!!!!!!
天井が崩れ落ち、蒼白い閃光がその場を包み込んだ。
鮮血が、シドの頬に跳ぶ。それは眼の前で、真の最強とやらを刻もうとしていた敵のものだった。
「die」
キンッ――、ザンッ!!
シャドウが立っていたその場の次元が歪み、シャドウの体が余すこと無く斬り刻まれる。
その衣服も、剣も、何もかもが斬り刻まれ、体の中身を含めた隅々が傷だらけとなる。
「ガッ…!?」
激痛が迸る。それまで感じたことのない苦痛が、全身へと走る。
何の痛みだ、何の傷みだ…? この、感じたことのない傷みは、一体何だ…!?
「It is a nightmare time.」
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