ハーメルン
上京したら可愛い探偵と同居生活することになったんだが
新たな事件
結局、一晩警察署で過ごす羽目になった。
私たちは情報を警察に共有し、そのまま自宅へと戻ることにした。
起きたのは情けないことに昼過ぎになってから。
ルデアはそんな疲れと縁がないのか、安楽椅子でパイプを咥えていた。
いつも通り煙は出ていない。
私はルデアが用意した昼食――今日はパスタのようだ――を食べながら、先日気になっていたことを聞いてみることにした。すなわちルデアの核についてである。
「ルデア、自動人形の核が宝石であることは知っていたのか?」
「ボクが隠してたみたいに言うのはやめてよ。ちょっと詳しい専門書を見れば簡単にわかることだよ? 大学で習うことだとは思うけど、まだまだ勉強が足りないね」
「――そして貴様の核が『ルデアの雫』ということだな?」
「おそらくはね。ボクも実際に確認したわけじゃないからなんとも言えないけど」
ふむ、状況を整理してみよう。
条件一、祖父は祖母を生き返らせるために複製とも言えるルデアを作った。
条件二、祖父は仲間のために複数の宝石を求めていた。
条件三、けっきょく祖父は死んでしまった。
条件四、他の仲間はまだ宝石を求めている。
条件五、エリーゼが『ライラの涙』を手に入れた。
条件六、他の仲間はエリーゼ含め、あと四人いる。
以上の条件から、祖父は仲間たちに殺された可能性が高いといえる。
しかし、であるならばなぜルデアは無事なのか。
宝石が目当てならば、ルデアの核が無事である道理がない。
ルデアの存在を知らなかった可能性も考えられるが、どのみち『ルデアの雫』を祖父が持っていたことは知っているはずだ。家探しをしないのもおかしい。
この事件、まだなにかあるな……。
とはいえ古城にいる連中がこの事件を解く鍵になるのはたしかなはずだ。
「さて、ルデア。一段落ついたら古城に向かうぞ。…………ただし貴様は狙われる可能性がある。ついてこないほうがいいかもしれん」
「ボクにまた助手を失えっていうのかい? そんなのはごめんだよ」
「…………そうだな」
泣きそうになったルデアの顔を見て、私は彼女を連れて行くことにした。
どのみち私一人ではエリーゼに簡単に殺されてしまう。
魔術探偵として活動するにはルデアの協力が必要不可欠なのだ。
湖の古城へと歩いていく。
祖父の遺産をやりくりして自動車でも購入するべきかもしれない。
その場合、免許を取る必要があるが。
一~ニ時間歩いたところで、湖の古城をその目で見ることが出来た。
レンガで作られ、漆喰で塗られた、古めかしい古城である。
城門前には、既に私たち以外に警察が来ているようで、何車両か停まっていた。
しかしそのどれもが内部に入れないで立ち往生しているようだった。
それもそのはずである。城門は開かれておらず、そもそもたどり着くための橋すら下ろされていないのだから。周囲の堀を自動車で超えることは不可能だろう。
「なんだろう? 聞いてくるね」
「答えてくれるのかね」
「ボクのコミュ力をあまり舐めない方がいいね」
――などと言ってルデアが警官たちに事情聴取を始めた。
どうも近所の探偵ごっこしているお子様と思われたのか、気さくに答えてくれているようだ。守秘義務はどうなってるんだ。ルデアから聞いた情報によると、どうやら古城の主が城門を開けてくれないらしい。そもそも連絡の方法がない、とか。
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