ハーメルン
上京したら可愛い探偵と同居生活することになったんだが
解答編-真
警察からだいぶ詰められて、警察署を出てこれたのは二日後の朝になっての事だった。
彼らにとっても警官が起こした大事件であり、私たちは生き残った唯一の証人であることは理解しているが……まったく災難だった。
とはいえライラの涙と、はるか昔に盗まれた国宝を回収したこと。
それからマルテンシュタイン家の取り計らいによって、なんとか不起訴となりそうだった。これで犯罪者となったら目も当てられない。ザスキア嬢には感謝だな。
宝石は警察から渡すと言われて回収されてしまったが、身元引受人も兼ねてもらったために警察署から直行でマルテンシュタイン家へと向かうことになった。
具体的には、あの自動車で迎えに来た。
また酔いを我慢しながら自動車に乗る羽目になったのだった。
「ナハトさま! ご無事でよかったですわ!」
屋敷に着くなり、玄関から飛び出してきて抱きついてきたザスキア嬢。私はそこまで屈強な体ではないので、つい転びそうになるがやんわりとルデアが支えてくれた。
「あ、ああ。すまないちょっと離れてくれないか。転びそうだ」
「あら、ごめんなさいまし。とても大変な事件だったと聞いて、心配になっちゃって」
おほほ、と笑いながら離れるザスキア嬢。
そこまで親密になった覚えはないのだが――まぁ、誰にでもこうなのかもしれない。
少しばかりほんわりしている娘だから、人との距離が元から近いのだろう。
「わたくし、そう重くはないと思っていたけれども、ちょっと食べすぎちゃったかしら」
「貴様ぐらいの年齢ならば二~三十キロ以上あるのが普通だ。おかしくもなんともない。ただ私が人の身を支えきれんというだけで……」
「いいんですのよ、ナハトさま! わたくし、殿方も華奢のほうが美しいと思いますし」
「ははははは……」
屈強ではないにしろ、幼少期はそこそこ祖父に鍛えられた経験があるのだ。
そこまで華奢だったとは思っていなかったのだが……少しばかりトレーニングするか。
私たちの会話を聞いていたルデアがこほん、と咳払いをした。
「歓談はそれまでにして……夫人に色々報告しておきたいんだけど、案内してくれるかな? ねっ、ナハトくん」
「ああ、そうだな。ライラの涙の件もあるし……」
「おっと、そうでしたわね。それではついてきてくださいまし」
そう言ってザスキア嬢が先導して進んでいく。
いつも通り荘厳な屋敷の応接間に出ると、そこにはアレクシア夫人が座っていた。
ソファに案内されている辺り、そう堅苦しい挨拶は不要のようだ。
「よく来たのぅ。さてライラの涙についてじゃが……」
それについてはものすごく気まずい案件だ。
なにせ破壊したのは私たちなのだから。
いやまぁ、しょうがなかったにしても……。
「そうだな……残念ながら破壊されていた。なぁ、ルデア」
「えっ、あっ、うん。そうだねっ」
俺が話題を振るとあからさまにドギマギとするルデア。
やはり人を騙すことに向いてないようだ。
「ライラの涙はよい。わらわにも責任があるからな。あんな男になびいていなければ盗まれることはなかったのじゃから」
はぁ、とためいきをつく夫人。
仕方のないこととはいえ、家宝を失ったのだからそのショックは大きいはずだ。
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