ハーメルン
上京したら可愛い探偵と同居生活することになったんだが
取り調べ
「王都に引っ越しそうそうとんでもない事に巻き込まれたようね。探偵さん?」
警察に通報などやめておいたほうがいいと思っていた。
しかし下手に調査されて自分たちが犯人だと思われてもまずい。
そう思って連絡した結果がこれだ。
私は今、取調室で簡単な詰問を受けていたのだった。
せっかく手に入れた日記帳も証拠品として押収されてしまう始末。
私の取り調べを行っているのは、妙齢の女刑事。
肩ほどでばっさり切り揃えた赤髪にタイトなスーツ。
今の御時世では珍しい働く女性である。もちろん昨今では増えてきているというが。
「事件の内容なら大体話した。遺書のとおりに山小屋に行ったら突然山小屋が放火されて、襲いかかられたんだ。私たちは被害者なんだが」
「もちろん山小屋に放火したのはアンタたちでないことはわかっているけれどぉ……。そもそも遺書っていうけれど何よこれ、読めないじゃない」
「それは――私の魔法だけで読めるようになっている」
「は? どうやって?」
「私の魔法は『嘘を見抜く』事ができるのだよ」
「ふざけてるわね……」
さて、ややこしいことになった。
別段急いでいるわけではないが、大学の予習もしておきたいのだ。
せっかくの時間を無駄には出来ないのだが。
そう考えていると、ハァ、と女刑事は溜息をついた。
「アンタ、もう帰っていいわよ。あの杖の魔術痕跡はもうとっくの昔に調べてあるようだし、自動人形がだいたい語ってくれたからね」
「そうなのか?」
ルデアは別の取調室にいるのだが、どうもペラペラと喋っているようだ。
推理はダメでも事実は語っていいのか。
「どうにもかなり高性能の自動人形みたいだけど。生体部品も使ってるし」
女刑事が興味深く聞いてくる。そんなことも警察はわかるのか。
「どこから手に入れたの? アレ」
「祖父の遺品だ」
「魔術探偵ジェット・アイゼンベルクか……。ええ、アタシも知り合いだったわ」
「へぇ……」
刑事と縁があったのか、祖父。しかしそれならば話は早い気がするな。
是非とも今回の件に協力してもらいたい。
「であれば、祖父の殺害の件を調べてもらえないか? 遺書によると、単なる溺死ではないらしいんだ」
「ええ……。まぁ、日記の件もあるし、上司には相談しておくわ」
調査が再開されるかは断言できないけれど、と女刑事が付け加える。
終わった事件を再調査することなど、まずそうそうないのだろうか。
だが、その糸口にでもなれば幸いだ。
「助かる。……貴様も祖父は事故でなくなったと思ってるのか?」
「貴様はやめて。エリーゼよ。エリーゼ・エルンスト。よろしくね」
そう言って、エリーゼは考え込むように顎を撫ですさった。
「そうね、アタシもアレは単なる事故ではないと思っているわ。しかしだからと言って、調査の中止は上の意思だしね……」
「なぜ事件の調査は中止されたんだ?」
「魔術の痕跡がなかったからよ。つまるところ事件性はないと判断された。あのジェットさんが魔術無しで誰かに殺されるはずもないと判断されたのね」
「しかし今回魔法使いが出てきた」
「炎の魔法使いでしょ? どうやって溺死させるのかしら」
[9]前話
[1]次
最初
最後
[5]目次
[3]栞
現在:1/3
[6]トップ
/
[8]マイページ
小説検索
/
ランキング
利用規約
/
FAQ
/
運営情報
取扱説明書
/
プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク