ハーメルン
さみしがりやの恋中さんはあまあまをご所望 ~お隣の天才プログラマーが今日も俺を離してくれないので諦めてイチャイチャしてたらいつの間にか両想いでした~
恋中さんとお昼休み
昼休みが始まった。
授業中の静寂が嘘のような喧騒が生まれ、生徒達は次々と移動を始めた。
まだ高校生活が始まってから一週間。
いや、一週間も経った。大半の生徒は一緒に食事する相手を見つけており、まるで磁石が引き合うかのように机を合わせたりする。
……恋中さんは、どうしてんのかな。
勝手に一人で食べていると予想しているが、ひょっとしたら仕事をしたりとか、何か用事があるかもしれない。だから軽い腕のストレッチをする振りをして、彼女に目を向けた。
……なんか背筋を伸ばして座ってる。
移動する様子は無い。
食事を始める気配も無い。
……とりあえず購買に行くか。
彼女を誘うにせよ、誘わないにせよ、手元に飯が無い。
だから俺はいつものように教室を出て、購買へと向かうことにした。
「あのっ!」
途中、聞き慣れた声に呼び止められた。
振り返ると、スクールバックを持った恋中さんが立っていた。
「……作り過ぎてしまったの」
彼女は尻すぼみに、ギリギリ聞き取れるくらいの声で言った。
言葉の意味は確認するまでもない。むしろ、この提案があることは想像していた。彼女から言わせてしまったことが申し訳ないとすら思える。
「ありがとう。どこで食べようか」
だから俺は単刀直入に伝えた。
彼女は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をする。
「……良いんですか?」
「もちろん。てか、俺も購買から戻ったら誘うつもりだった」
どこか不安そうな表情をしていた彼女は、嬉しくてたまらないという様子で笑顔を咲かせた。それから機嫌が良さそうに目を細めて言った。
「じゃあ、教室に戻りましょうか」
彼女は半分だけ振り向いて、その場で立ち止まる。
……隣に来いってことかな?
そう思って肩を並べると、彼女は移動を始めた。
「私、友達とお昼を食べるの憧れでした」
「……そっか」
俺は彼女と反対方向に目を向けて言った。
友達。何度も自分に言い聞かせている言葉なのに、彼女の口から聞くと、何か胸に引っかかるような感触があった。
「あのっ、ごめんなさい。何か気に障ること言ったかしら?」
目線を戻す。
恋中さんはとても不安そうな目で俺を見ていた。
相変わらず距離感はバグってるのに、人の機微に敏感というか、鈍感というか……やべぇ、どう接するべきか分からなくなってきた。
「お弁当、何かなって考えてた」
「サンドイッチです!」
「へー、具は何?」
「色々です。君の好み、分からなかったから」
「そっか。楽しみ」
とりあえず笑みを浮かべて答えた。
彼女は得意気な表情を浮かべ、軽く胸を張って言う。
「はいっ、楽しみにしていてください。って、直ぐですけどね。えへへ」
口調が変わっていた。
今朝の会話を思い出すなら、俺の言葉を聞いて安心した、ということだろうか?
それから俺たちは教室に戻り、窓際にある恋中さんの席へと向かった。俺の席の方は既に人が集まっていて、入り込む隙間が存在しなかった。
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