初ガチャ
ガチャ。
硬貨を投入しレバーを回すことで、排出口から景品が入ったカプセルが排出される。
カプセルの中に何が入っているかは開けるまでのお楽しみ。
その魅力に取りつかれて多くの人間がガチャを回し続けるのだ。
目が覚めると、俺は見知らぬ白い部屋にいた。
床も天井も壁もすべて真っ白。触れてみるとつるつるしている。部屋の大きさは学校の体育館ぐらい、天井の高さは普通の家と同じくらい。
「あのー、誰かいませんかー!!」
叫ぶ。なんども叫ぶ。しかし返ってくるのは、反響した俺の声だけ。特に何の変化も見られない。
ドッキリ?馬鹿な、芸能人でも何でもない、ただの大学生である俺を、コンプライアンスに厳しいテレビ局が誘拐し監禁する?あり得ない。
記憶を振り返ってみる。スマートフォンでゲームをして遊び、午前1時にはベッドで眠りについたはずだ。
その証拠に俺の服はパジャマだ。ショッピングモールで買ったどこにでもあるパジャマ。
「大学の講義どうしよ…」
途方に暮れながら部屋の探索を始める。成果はなかった。扉も窓はなく、どうやって俺はこの部屋の中に入ったのだろうか。さらに言えば光源があるわけでもないのになぜか部屋全体が暗くない。どうなっているんだ。
「やっぱり、これかなあ」
部屋の中央に位置する、どう考えてもこの場に不釣り合いな、あるべきではない物。
ガチャガチャ。それが部屋の中央に存在していた。
日本中どこにでも配置されているガチャガチャ、下部の白い筐体にはコイン投入口と回転式のレバー、カプセルが出てくるであろう排出口。
上部にはふつうあるはずの、いったい中に何が入っているのか説明する紙がなく、しかしそのおかげで中身をよく見ることができた。
中には色とりどりのカプセルが多く詰まっており、しかし残念ながら中身を覗き見ることができない。
いったい中に何が入っているのかがまるでわからない。
しかしこの真っ白い部屋にあるのはこのガチャだけ。これを回さなければ事態は進展しないだろう。
俺は映画とかでよくある、金持ちの道楽のためにさらわれたのかなと考えながら、ガチャを回そうとする。
親切なことにガチャの前には何かの硬貨が置かれていた。
硬貨を取り外して観察するが、何の模様も刻まれてなく、ただ金属でできているということだけしかわからなかった。
さて。することもないのでコインを投入。今気づいたがこのガチャ、何円入れる必要があるのかどこにも書いてないぞ。壊れたりしないのかな。とか考えながらレバーを回す。
ガタンッ
排出口から白いカプセルが出てきた。シールが貼ってあり、『C』と書かれていた。
コモン、コモンか。はずれだな。
また微妙なものが出てきたもんだ。あら、力を入れていないのに簡単に開いた。
中には紙が入っていた。
『コンビニで売ってるチキン』
日本のコンビニエンスストアのレジ前のスペースで販売されているチキン。大体180円から240円の間で販売されており、肉汁たっぷりで非常にジューシー。アブラ多めでおいしいチキン。
[1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/2
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク