22センチ。芯材はユニコーンの毛。杖材はブドウ。群を抜いて頑丈。
これが僕の杖だ。リドルの杖と比較してみると分かりやすいが、どうにも平凡なところがある。
だが負けはしない。短い杖は優雅で洗練された呪文のスタイルを好むと聞く。僕にぴったりであり、ぴったりであるからこそ十全に使いこなせる自負がある。
「さあリドル、決闘の準備をしろ! 僕は以前とは違って、積極的に君を狙うぞ! そして仲直りをするんだ。今度は負けやしない!」
「……君、ついに気が狂ったか?」
思わずといった風にリドルは溢して、慌てて口を噤んだ。しかし周囲はそんな呟きよりも僕の方に興味が向いているようで、ダンブルドア先生も含めて呆れたような驚いたような目が向けられている。
沈黙を壊したのは、我に返ったロジエールの動作だった。彼女は思い出したように杖を振ろうとして、ダンブルドア先生の無言呪文に杖を取り上げられた。多分エクスペリアームス。同じように僕の杖も取り上げられたので。
「ってダンブルドア先生!? 何故!?」
「アルフレッド。君の熱意……熱意? には感心するが、授業中だよ。どのような事情があろうとも、それを考えて欲しいのう。スリザリンは5点減点。それと、他者を害しようとした君も5点減点。合わせて10点減点だ」
「あっ、はい……」
「チッ……バグショットのせいで……! 貴方がトムに決闘を挑むなんて百年、いや千年早いわよ!」
ロジエールを筆頭にリドルのお友達共が更に憎しみの目で見てくる。減点されたのは素直に謝るが、しかしそちらには用はないのだ。僕はただリドルだけを見つめる。リドルはダンブルドア先生の声に再び優等生の仮面を被って、落ち着き払って言った。
「決闘……身に覚えはないけれど、君がしたいというなら、良いわよ。授業の後で良いかしら?」
「構わない。場所は中庭だ」
「ええ、そうね」
「……やり過ぎないようにの。それと、誰か先生を立ち会いに付けるように。生徒同士の決闘では、決め時がつかぬ事もあるからの」
「分かりました、先生。……先生は、立会人にはなって下さらないのですか?」
リドルがそう言うと、ダンブルドア先生は少々不安そうに言った。
「残念ながら、少々仕事やら何やらで忙しくてな。是非、君の技量を見ておきたかったのだが……」
「それはとても残念です。ええ、勿論立会人は付けますとも。だから先生、そう不安そうな顔をしないで下さい。私は何も、バグショット君を殺そうというのではないのですから」
「……そうかね」
そうして授業は始まった。リドルが言ったように、僕は同級生達の面倒を見てやった。「杖は授業が終わるまで預かっとくよ。これも罰則だ」とのことで、杖無しでの指導は流石に難しかったが、それでも幾人かは変身術を成功させた。リドルの教え方を真似してみたのが良かったのかも知れない。
レストレンジやノットにエイブリーらは、授業中も恨みがましい眼で僕のことを見ていたが、流石にダンブルドア先生の手前、杖無しの僕に呪文を掛けてくることはなかった。しかしこそこそとリドルに何かを話しかけて、にやにや皮肉たっぷりに笑っていたのは気がかりだが。
授業が終わって、杖を返して貰う際。ダンブルドア先生は僕に言った。
「アルフレッド。何故トムに決闘を挑んだのかな? 名誉のためかね? 彼女に侮辱を受けたのかね? だとすれば、決闘は賢い選択肢とは言えないよ。……我々は、魔法という手段を持っているからこそ、安易な選択を選びがちだ。魔法史に知悉している君ならば、争うことの愚かさは分かっておるだろう?」
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