ハーメルン
龍教団物語
15話:転移者キョーコ


「大変です、街に痴女が現れたんですよ」
「え、そんな馬鹿な!」
町人の報せを受けた修道女が部屋に飛び込んできた。
厄介事ならこのアーデルヘイト異端審問官に任せてくれ!暇なのだわ。
街に馬を駆って向かうと、下着のような鎧を着た変態がいた。
14歳ぐらい、黒い長髪で、顔にガラスのついた謎の装飾品をつけている。
町人らに遠目からじろじろ見られても堂々としている。
まるで自分がこの世界の主役であるかのように振る舞う姿は、まさに異様であった。
「もし、そこのお嬢さん」
「はい?何でしょうか?」
彼女の異様な雰囲気、破廉恥な雰囲気に圧倒される。できれば関わり合いになりたくない!
「その服装は、公共の場に相応しくないですね……」
念の為持ってきていたローブを差し出す。
「……違う」
「え?」
「思ってたんと違う!ファンタジー世界なんだから!もっとこう、あるでしょ!?」
急に怒りだした、怖い。
「な、何を怒っているのですか……?」
「ごめんなさい、取り乱してしまって……ちょっと混乱してて……」
「はあ……」
「……私の格好どう思う?」
彼女は自分の服を指差す。下着のような鎧だ、胸と股間しか守っていない、なんか意味あるの?
「破廉恥、ですかね……」
「そう、それはわかっている……こういう装備の人っているの?」
「自分が知る限りでは初めてですね。聞いたことはないです」
「やっぱり……ファンタジー世界なのに……世界地図も地球とおんなじだし……」
なにやらブツブツと言っている。この口ぶり、ひょっとして狂気に頭が支配されているのではないか。
「あのー、医者の元へ連れていきましょうか?修道院に薬師がいまして……」
「私は正気よ!!」
「狂気に侵された人はみんなそう言うのです」
「私は、日本という国から転移してきたの!」
「はぁ、ニホンですか……聞いたこと……ある!」
異世界人の故郷の呼び名だ。聖女教徒が天上界と呼ぶ国である。
「とりあえず、立ち話もなんですので、修道院でお話を……馬乗ります?」
「馬!?乗りたい!」
急に目を年齢相応にキラキラさせる彼女。二人乗りで修道院へと向かった。

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

とりあえず、応接間に通した。どこから聞きつけたのかパメラが大慌てでやってきた。
「破廉恥ガールのお話聞かせてくれぇ!」
「破廉恥ガールって……私、キョーコと言います」
「私はアーデルヘイト。こっちの不遜なのはパメラ写字生」
軽く自己紹介を済ませると、キョーコは身の上話を始めた。
「あの、コスプレイヤーになりたくて、縫い物とか色々勉強してて、そしたら、クラスの不良にバレて、真冬の川に捨てられて、飛び込んだら、なんか女神様が出てきて、それで……」
よくわからない単語が多いが、とにかく辛い目に遭ったようだ。彼女はだんだんとしょぼくれていった。
「かわいそうにねぇ、辛かったねぇ、私と気が合いそうだねぇ」
パメラはなぜか同族意識を感じている様子である。
「女神様に、チート能力貰って、異世界に来たけど、この世界って、なんていうか、ゲームじゃないっていうか、現実っぽいというか、剣と魔法の世界だけど、そうじゃない部分もあって、それがまたリアルで、もう、どうしたらいいかわからないです……」
話を聞いてもらって安心したのか、借りてきた猫のように大人しくなっていた。

[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/3

[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク
携帯アクセス解析