18話:メディノの滞在
あの二人は見習い修道士だが、この巡礼に立派に参加していて偉い。
「あ、アーデルヘイトさん!ダンジョンぶりッスね!」
「久しぶり。キョーコも一緒なんだ」
「キョーコちゃんはすごいッスよ!本当に色んなことをよく知ってますッス!」
「そ、それは、そんなことはないよ!マシニッサくんも、この世界のこと色々教えてくれるし……」
マシニッサくんはキョーコの面倒を引き受けているようで、すっかり懐かれているようだ。
そして彼の方はと言えば、少し照れ臭そうにしている。うーん、かわいいぞ二人とも。
「二人のゆく先々に幸多からんことを」
マリカが祝福の言葉を贈った。彼女の目が黒いうちは大丈夫だろう。
「マリカさん、そんな大げさな……あ、そういえばあっちに飴屋さんの屋台が出てたッスよ!」
「マジで!?行く行く!」
マリカは目を輝かせて駆け出していった。
その背中を見て、私たち三人は思わず笑ってしまった。
「なんだか、修学旅行みたい……」
キョーコはそう言う。よくわからないが、修学と言うからには霊験あらたかな体験を積めるのだろう、ニホンにもそういう行事があるのか。
「い、いえ、そういう感じではなくて、学生たちが旅行先ではしゃぐようなイメージでして」
? 神学校の学生たちが霊験あらたかな体験を……。
「審問官、ニホンの学生というのは神ではなく科学について学ぶそうッスよ」
「ふーん……?」
「国民全員が学者になるそうッスよ!」
それを聞くと、キョーコは苦笑いをしていた。やはりよく分からないが、とにかく楽しそうではある。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
メディノには数日滞在し、礼拝や慈善活動を行う。
「ヴェネトリオ修道院は若い人材ばかりで羨ましい限りですな」
「みな、まだまだ修行中の身です」
メディノの若い修道士たちは街で遊びすぎて還俗してしまう者が多いのだという。
大司教区とはいえ、街の人々の大半は俗人である。美味しいレストランや娼館や賭場も数多く存在する。
都市が大きく栄えているというのもなかなか一長一短だ。
「確かに、満喫できるねぇ……」
クサヴェルにおんぶされているパメラ。なんか、この数日で太った……?
「太ってないねぇ。太ってないよねぇ?」
「太りました」
「く、クサヴェルくん……!」
裏切りのクサヴェル。そりゃあ、四六時中おんぶさせられているのに更に太られたらね。彼のせいでもあるが。
マリカは豪華な装飾品をジャラジャラ言わせていた。賭場の女王になったようだ。
「神通力でちょっとね!」
「イカサマじゃないの」
「バレなきゃいいの、バレなきゃ」
「はぁ……」
ああ、神龍クピドよ、彼女に憐れみを……と言いたいところだが、彼女がクピドその人、その龍である。
「おお、マリカよ、その装飾は!?」
院長が目ざとく見つけた。叱られてしまえ。
「院長、私には賭博の才能がありました。この才能を活かし、宝物を寄進することにより、神龍クピドに奉仕するつもりでした」
「なるほど!素晴らしいぞ!我が修道院も安泰だ!」
「左様でございますね!」
これだもの。修道院長たるものが俗物にも程がある。
「衣食足りてこそ愛は育まれる。富めば愛も膨らむのだよ。それに慈善活動には多額の金が必要だからな!」
一理あるような無いような。とりあえず私は何も言わないことにした。
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