ハーメルン
龍教団物語
3話:いたずら少年たち


院長曰く、最近修道院に悪戯をするものがいるという。
夜中に忍び込んだり落書きをしたりするそうだ。
「子供の仕業でしょうか?」
「まあそうだろう。君は暇だから調べておいてくれ」
暇だから、だとぉ!?ああそうだよ!元はと言えばお前が私を審問官なんかにするからだろ!?
まあ、暇なのはありがたいんだけれども。
子供の悪戯とて放置していればより過激になっていくだろう。早急に対策が必要だ。
とりあえず現場に行ってみよう。
修道院はヴェネトリオの街の外れに位置する。わざわざここまで来て悪戯するとは随分と暇なガキもいたものだ。誰かみたいだなぁ。
そして、こういう防犯は修道騎士たちの仕事でもある。
「やはり来ましたか!」
女聖騎士ルーナは私が調査を頼まれるということを察知していたようである。私を知る者なら誰でも察知できるだろう。
「ちょっとした悪戯ですが、盗賊の仕業である可能性もありますので」
「盗賊だぁ?いつでも来いってんだ!ぶっ潰、ぶっ殺してやる!」
威勢のいいオークの聖騎士ギヨームが叫ぶ。なんで物騒な方に言い直した?
彼はオークタニアと呼ばれるオークの国出身のオークである。覚えてオークように。
しかし盗賊ならやはり一大事である。ここは慎重に捜査しなければならない。

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

明るいうちに痕跡を見つけ、街のクソガキどもの仕業であることが判明した。
そういうわけで、今は夜。彼奴らを驚かせて追い返してやろうという魂胆だ。
私は修道院の外で子供たちが来るのを待つ。
しばらくすると暗闇の中から数人の子供が姿を現した。どうやらあの子たちのようだ。
「げへへへ、悪戯してやるぜぇ……」
「ぐぎゃぎゃ、ぎゃっぎゃっ!」
「シーッ!静かに!」
ウワーッ!ゴブリンみたいなガキもいる!
私は彼らに見つからないように、修道院内に潜む騎士たちに合図を送った。
わざと中に入らせておいて、現行犯を捕まえる作戦だ。
「さっさと入るぜ!」
「ぐぎゃぎゃっ、おれ、周り見る!」
ガキどもは塀に空いた小さな穴から中へと侵入していった。

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

急いで塀の内側に戻ると、騎士たちがガキどもの様子を伺っていた。
「やはり子供の仕業でしたか」
「そういう年頃なんだよな」
ルーナとギヨームは微笑ましそうにしている。私にはそういう話はよくわからない。
とはいえ悪事は悪事なので、引っ捕らえるしかないのだけれど。
そうして、ガキどもが龍の小さな置物に手を伸ばした瞬間――。
「そこまでだ!」
ギヨームが飛び出して剣を抜き放った。
「ひぃっ!?」
「ぎゃっぎゃっ、ごめんなさい!」
「斬らないでー!」
「お前たち神聖な修道院をなんと心得る!おいたが過ぎるぞ!」
「なんでぇ、お布施で生活してるタダ飯食らいの癖に!」
「……くっ!」
言い返せないのかよ!私達も色々やってるよ!?冠婚葬祭にお祓いとか歴史書書いたりとか……!
「ギヨームさん、下がってください」
そこでルーナが立ち上がる。
「私に任せてください」
「ルーナ殿、大丈夫ですか?」
「ええ」
ルーナは一歩前に出る。
「ひぃっ!何だこの仮面野郎!」
「野郎ではなくスケですが……悪戯が過ぎますね、神聖な彫像に落書きしたり……」

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