ハーメルン
ナンバー1ヒーローの娘になった、悪の組織の改人系ヒロインのヒーローアカデミア
12 USJ
「追ってきたら、この裕福な家族ぶっ殺してやるからな! いいかぁ! 俺を追うなよ、ヒーローども!」
「ヒーロー! 助けてぇ!! せめて娘だけでも!!」
とある朝の通学時間中。
今日も今日とてヴィランが現れた。
本日のは一家族を丸ごと抱きかかえて人質にしている、異形型の大男だ。
犯罪発生率がマシになっているのという話はなんだったんだろうか。
「行かなくては!」
「行ってらっしゃーい」
車から飛び出してからマッスルフォームに変身し、そのヴィランを退治しに向かう父。
他のヒーローが少し苦戦していたが、ナンバー1の敵になるようなレベルではなく、首筋に手刀を叩き込まれてあっさりと気絶した。
「キャアア! 轢き逃げー!!」
「むむ!?」
が、次の瞬間に飛び込んでくる、更なる事件の情報。
オールマイトは躊躇なく、そっちの現場へと跳んだ。
「ごめん、魔美ちゃん! 先に行ってて!」
「いや、行っててじゃないよ」
通話でそんなことを言われた瞬間、魔美子は長年の付き合いで察した。
あ、これは次から次へと事件が連鎖して、全部に首を突っ込むパターンだなと。
今日だって生徒の前ではマッスルフォームを維持して授業をしなくちゃいけないのに、いつもの調子だと活動限界を迎えるまで人助けに走りかねない。
オールマイトとは、そういう人間だ。
「やっぱり、車に積んでおいて良かった」
ヘドロ事件の反省を踏まえ、用意しておいた装備一式。
歴戦を感じさせる傷だらけの厳ついヘルメット。
肩幅をかなり大きく見せる上に、絶対にめくれないような工夫が施されたブカブカのローブ。
靴底30センチもあるスーパーシークレットブーツ。
魔美子のもう一つのコスチューム。
車から降りて物陰でそれらを身に着ければ、彼女はあっという間に身長180センチを超える巨漢の男に変身した。
「隣町で立て籠もり事件があったらしいぞ!」
「むむ!?」
その状態で父を追いかけてみれば、轢き逃げ犯を車ごと捕まえたところで、案の定次の事件に首を突っ込もうとしていた。
「私が行く!!」
「行かなくてよろしい」
「!?」
次の現場に向かって飛び立った父に空中で追いつき、足で押して進路を変更。
短時間なら人目を遮断できそうな、目立たないビルの屋上に強制着陸させた。
「オールマイト。貴様は己の現状を自覚せよ」
「ま、魔美ちゃ……」
「我が名は、Mr.キックブレイクだ」
「あ、はい……」
Mr.キックブレイク。
最低限人命を気にかけてこそくれるが、建造物等への被害は全く考慮せず、相対したヴィランに大怪我を負わせることも多い過激派
自警団
(
ヴィジランテ
)
。
ヴィジランテとは、資格を持たない無免許の身でヒーロー活動を行うイリーガルヒーローのこと。
魔美子の破壊衝動は、とてもではないが資格獲得まで我慢し続けることなどできるはずのない強烈なものであり、
隔離施設
(
学校
)
で定期的にロボットとかを生贄に捧げても全然足りなかったため、大人達は苦渋の決断で、勝手に始めたこのヴィジランテ活動を黙認したのだ。
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