ハーメルン
ナンバー1ヒーローの娘になった、悪の組織の改人系ヒロインのヒーローアカデミア
17 体育祭
魔美子が毎日の特別指導で死にかけ、そのストレスを修行という名目でぶつけられ続けた緑谷も死にかけている間に、あっという間に2週間が過ぎ去り。
雄英体育祭開催の日がやってきた。
「皆、準備はできてるか!? もうじき入場だ!」
控室にて、委員長である飯田がいつも通りに声を上げる。
クラスメイト達の様子は、緊張か高揚の二通りだ。
緑谷、麗日などは緊張。爆豪、轟などは高揚している。
……いや、後者二名のそれは、もはや高揚などというレベルではないが。
「殺す!!」
爆豪はもう安心感すら覚えるレベルで殺気立っている。
そして、
「八木」
轟の方は、静かに燃えていた。
ただし、他のクラスメイト達とは根本的なところが違う燃え方で。
「お前には、勝つぞ」
轟の宣戦布告。
その瞳の奥で炎が燃えている。
爆豪のような健全(?)な闘志ではなく、もっと粘り気を帯びたドロドロとした炎が。
戦闘訓練の時に感じたのと同じだ。
相変わらず、ちょっと怖い。
「あー、うん。よろしくー」
「おお! 宣戦布告か!」
「爆豪も燃えてるし、戦闘訓練の時のリベンジだな!」
あまり好印象が抱けずにそっけない態度になる魔美子に反して、クラスメイト達は勝手に盛り上がった。
というより、盛り上げてくれたと言うべきか。
轟の危うさを他の皆もなんとなく感じ、暗いオーラを陽気なお祭り騒ぎのオーラで打ち消そうとしてくれているのだ。
「さあ、時間だ! 行こう!」
飯田が声をかけ、全員が動き出す。
入場の時間だ。
『雄英体育祭! ヒーローの卵達が我こそはとシノギを削る、年に一度の大バトル!
どうせ、テメーらあれだろ! こいつらだろ!
ヴィランの襲撃を受けたにも関わらず、鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!
━━ヒーロー科! 1年A組だろぉぉぉ!?』
プレゼント・マイク先生が、盛大にA組を持ち上げるような実況で会場を盛り上げる。
しかし、マイクの言っていることは別に誇張でもなんでもない。
1年A組がやたらと注目されているのは事実だ。
魔美子のショッキングなあれを隠蔽してもなお、襲撃事件の話題は良くも悪くも世間を賑わせている。
中には「オールマイトが雄英に就任したからヴィランの標的になったんじゃないか!?」という、事実ではあるものの完全に叩き目的なマスゴミもいて、魔美子は大変イラついているので、命が惜しければマスメディアは彼女に近づかない方がいい。
「わぁぁぁ……。人がすんごい……」
「大人数に見られる中で最大のパフォーマンスを発揮できるか……! これもまたヒーローとしての素養を身につける一環なんだな」
「めっちゃ持ち上げられてんな! なんか緊張すんな! なぁ、爆豪!」
「しねぇよ。ただただアガるわ」
大観衆に呑まれかけ、高揚から緊張に変わる者が何人か。
ヒーローの卵として、緊張を跳ね除ける者も多い。
「緑谷少年。あれだけ付き合ってあげたのに情けない真似したら……わかってるよね?」
「ひっ!? は、はい!」
緊張に呑まれそうになっていた緑谷は魔美子に活を入れられ、胃から酸っぱいものがせり上がってくるのと引き換えに、大観衆など気にならなくなった。
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