ハーメルン
ナンバー1ヒーローの娘になった、悪の組織の改人系ヒロインのヒーローアカデミア
18 体育祭 パート2

『さぁて! 狭ぁいスタートゲートから真っ先に飛び出したのは、大胆不敵な宣誓をかましてくれた八木だぁ!
 とんでもねぇ身体能力で、ガンガン後続を引き離していくぅ!』

 実況席からプレゼント・マイクの声が聞こえてくる。
 彼の言う通り、一抜けしたのは魔美子。
 個性禁止縛りをものともせず、素の身体能力だけで先頭をひた走る。

「速っ!?」
「あれで個性使ってないとかマジかよ!?」
「解除できない異形型が混ざっているとは聞いていましたが……!」

 魔美子が縛りプレイをしていることを知っているクラスメイト達は、大きな大きなハンデがあってもなお圧倒的な魔美子の姿に、いっそ憧憬すら覚えた。
 しかし、爆豪を筆頭とした例外ももちろんいる。

「行かせねぇよ……!」
『二番手は轟ぃ! 生み出した氷で自らを押し出す滑走で八木を追う! ついでに、氷は後続への妨害にもなってんぞ! 一挙両得だぁ!』

 最も近い距離から魔美子を追うのは、開始前に宣戦布告してきた轟焦凍。
 右半身から生み出した氷で自らを押し出し、冷気で後続の足を凍らせて止める。
 マイクの言う通り、一手両得の好手だ。
 それでも、轟のスピードは素の魔美子にすら及ばない。

「くそっ……!」
「何をしている焦凍。左を使え」

 観客席にて、焦った様子の轟にそんな声をかける存在がいた。
 しかし、遠く離れた場所からの声だ。届くはずがない。
 たとえ届いたとしても、彼がその主張を受け入れることは無いだろう。
 今も轟は右半身から繰り出す氷の力だけを使って、必死に魔美子を追っていた。

「……くだらん反抗期を。そんなだから後ろ(・・)にまで追いつかれるのだ」
『おおっとぉ! 轟の氷結を避けて、A組が続々と飛び出してきやがったぁ!』

 必死に前だけを見る轟に、後ろから多くの者達が迫る。
 観客席の男は、歯がゆそうな様子でそれを見ていた。

『三番手につけたのは入試2位の爆豪! 加速系の個性を持つ飯田! そして……こいつはとんだダークホース! 全くのノーマークだった無名野郎! 緑谷だぁ!』
「デク、テメェ!?」
「僕だって負けない! 負けられないんだよ、かっちゃん!!」
「俺のことも無視しないでもらいたい!!」

 爆豪、緑谷、飯田が三番手の位置で争いながら、轟との距離を詰めていった。
 掌の爆破を推進力にする爆豪、轟の氷結のせいで不安定な足場に苦戦しているが、それでも充分に速い飯田。
 そんな二人に、緑谷は食らいついていた。

(ワンフォーオール・フルカウル! 出力5%!)

 ワンフォーオール・フルカウル。
 魔美子との特訓で身に着けた技。
 調整に成功したワンフォーオールの力を全身に巡らせ、身体能力を強化する。
 とはいえ、まだ未完成にもほどがある緑谷の体が無理なく耐えられる出力は、たったの5%。
 それでも、あると無いとでは大違いだ。

「あああああああ!!」
「この……! クソナードがぁああああ!!」

 その力は爆豪と互角……とまでは行かない。
 引き離されそうなのを、必死に足を動かして、必死に爆豪の攻撃を防いで、必死に置いて行かれないようにしているだけ。

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