ハーメルン
ナンバー1ヒーローの娘になった、悪の組織の改人系ヒロインのヒーローアカデミア
7 入学!
時は流れ、4月になった。
春。それは出会いの季節。
青春の学園生活というものをコミックの中でしか知らない魔美子は、柄にもなく新生活の始まりにワクワクしてソワソワしていた。
入学式の朝。
父の運転する車に乗り込み、生徒の通学時間よりよほど早い教師の通勤時間に学校入りした魔美子は、とりあえず余った時間で校内をうろついてみた。
「イモムシ……?」
「久しぶりだな、八木」
「あ、なんだ。イレイザーさんか」
校内で最初に発見した人は、イモムシのような寝袋に入った中年男性。
抹消ヒーロー『イレイザーヘッド』。
メディアへの露出を嫌うマイナーなヒーローだ。
しかし、魔美子とは面識があった。
「……久しぶりなんて言っておいてなんだが、よくわかったな。10年ぶりくらいだろうに」
「記憶力にはそこそこ自信がありますからね。さすがに最初の暴走以前の記憶は殆ど無いけど」
「……そうか」
短いやり取りで、早速イレイザーの顔が曇った。
彼との出会いは父に保護された直後にまで遡る。
抹消ヒーローと呼ばれた彼の個性で、魔美子の暴走を抑えられないかという試みで引き合わされたのだ。
結果は半分成功、半分失敗。
発動前であれば抑えられるが、発動中のものを強制停止させることはできなかった。
魔美子の個性は発動に1秒とかからないので、抑止力としては微妙という判断を下され、それ以降は会う機会が無かった。
しかし、そういう繋がりがあったので、彼は魔美子の事情を全て知らされている。
「まあ、とにかく。お前の担任は俺になった。あと、俺の本名は『相澤消太』だ。相澤先生とでも呼んでくれ」
「了解! よろしくね、相澤先生!」
「ああ」
(あの人形みたいだった奴が、随分変わったな)
テンション高めに「先生とか学校っぽい!」と口走っている魔美子を見て、イレイザー改め相澤は少し優しい目になった。
前に会った時は、まともな教育など受けておらず、約4歳くらいなのに言葉すら話せない、物心すらついていない、空っぽの幼い人形だった。
それが今では、ちゃんと感情豊かな女子高生になっている。
個性と心に抱えている問題もオールマイトから聞いているが、とりあえず表面上はまともな人間になっているのを見て、あの時、自分の力では助けられなかったという後悔が少しはマシになるのを感じた。
まあ、だからと言って贔屓はしないが。
「校内を歩き回るのは勝手だが、ホームルームが始まるまでには教室に戻れよ。遅刻は容赦なく厳罰に処すからな」
「はーい!」
そうして相澤と別れ、魔美子は学校探検を続ける。
さすがはヒーロー科の最高峰である雄英と言うべきか、広い。
朝の探検だけでは、到底全部を見て回ることはできないだろう。
ガイダンスというものに期待だ。
いや、毎朝少しずつ、自分の足で開拓していくというのも面白いかもしれない。
そんな開拓し甲斐のある校舎を回っているうちに、いい時間になってきた。
自分の教室、1年A組に向かう。
中にはもう結構人の気配があって、クラスメイト達は集結してきているようだ。
こんにちは青春!
そんな気持ちで、魔美子は教室のドアを潜った。
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