ハーメルン
敵幹部でも主人公見たらテンションあがる…あれ?(冷や汗)
「「辞表、書き方、検索」」
死にたくなる話し合いから、七日経った。
ボクことフジワラ・アマネの生活に大きな変化はない。
強いて言えば、携帯の連絡先が一つ増えたこと。そしてそれをあんまり使えていないことくらい。
…そう、本当に大きな変化はない。
一部の職員さんからは、睨まれたり距離を置かれたりする。酷い時は小声で「化け物」呼ばわり。
かと言って同じ班の人達からは、やれ半端者、やれ話しかけんなだの、きつい言葉が飛んでくる。
苦しいというか、なんというか。そんな普通。
……謎の落差みたいなのを体験して、いつもより余計に辛く感じてしまうボクがいた。
「……あれ、紅茶がしょっぱい…」
「アマネ、それ涙のせいだ」
お昼休み、ボクはミナヅキと対策局の屋上にいる。
長方形と正方形を合わせた無機質なデザインで有名な本局だけど、屋上には芝生が敷かれており、軽いレクリエーションスペースになっている。
ボクは対策局だったら、晴れの日のここが一番好き。
澄み渡る青空が間近に見えて、あたたかな日差しを浴びて、憂鬱とした思考が軽くなる。心の洗濯ってやつだ。
そして晴れた日は、よく此処でお昼を食べる。
これはこの上ないリフレッシュだ。
ちなみに、今日のボクのお昼はトマトサンドとアールグレイで、ミナヅキは豚丼と親子丼だった…うん?
「それにしても…病院襲撃、かぁ…」
「実感わかない…うまうま」
「ねー」
ベンチに座りながら、お昼を一口。
爽やかな味が心地良い。そんな感想も霧散する。
いつもなら休むことに集中する大事な休み時だけど、今日に限ってボクは散漫になっていた。
───1区総合病院襲撃。対策局から放たれた密偵が、掴んで報告した情報。その日程は着実に近づいている。
嘘なら嘘が一番いい。杞憂ならそれでいい。
だけど、嘘や杞憂を願って放置は出来ない。当日はE班も全員が警備に回されるし、この報告を受けた時から、総合病院には少なくない人員が派遣されている。
増えた連絡先を使えていないのは、それも理由。
忙しいのもそうだけど、任されている任務のことを思うと、どうしても躊躇してしまう。
毎夜「どの面下げて?」と思っているのも理由。
呼び起こした記憶がフラッシュバックするのだ。
…関係にかこつけてるみたいな罪悪感がですね。
あとボクの〝ヘキ〟の罪深さを実感するというか。
でも、このまま希薄化するのは嫌だ。
色んな理由はあるけど、一番は心配だから。
〝良いんだよ、俺のことは〟
あれは、きっと「もう慣れた音」だった。
潰れそうになっても、彼は同じことを言うだろう。
ボクはため息を吐く。なんだか、悩みの種が増えてしまった。なのに、憂鬱さは無くて、それが少し変な気分。
ぼんやりと空を見る。長閑な青空。平和って感じがするのに、仕事はしっかりある。
いつもの癖だ。そんなことをしていると、ミナヅキがボクを興味深そうに、瑠璃色の瞳で覗いてきた。
「アマネ、あれから相手とどう?」
「んー…今は忙しいから、ちょっとね」
「おお、なんかお姉さんっぽい答え」
ふんふん、と興奮したように頷く。それと一緒に、青色の髪ももふもふと揺れた。
[9]前話
[1]次
最初
最後
[5]目次
[3]栞
現在:1/4
[6]トップ
/
[8]マイページ
小説検索
/
ランキング
利用規約
/
FAQ
/
運営情報
取扱説明書
/
プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク