紫外線の向こう
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拠点に戻って「ゴーレム」のオーバーホールを行う。くーちゃんは疲れからか眠っている。『俺』も疲れてはいたが、少し眠ったおかげか眠くはない。
最近はイルカのように半分ずつ脳を休めるというコツが出来たからというのもあるだろうけど。24時間営業の『私』なのでした。やること盛り沢山だしね。
ドイツ本国でラウラちゃん率いる部隊が表彰されている大規模非合法組織の掃討に成功したとかなんとか。うーん、間違ってはないか。主語に『私』が抜けているけど。今更、名声もこれ以上欲しいってわけでもないし。
解析に回している「VTシステム」の中身を見ながら『私』は嘆息する。人類ってまだこのへんをうろちょろしているってことに。薬物投与や人体改造によるISの適正を向上させる方法もナンセンスだ。誰でも乗れる仕組みが『俺』の求めているものだ。ISに擦り寄ってどうする。
こんなシステムなんてものは3年前には『俺』は通っている。
人体の負担の軽減方法も優れた挙動プログラムも行動ルーチンも『俺』が作り直せばすぐに改善できる。なんのために国防限定とはいえ軍にもISが使えるようにしていると思っているんだ。屈強な男性搭乗者も出ると見込んでいたのにちっとも出やしない。
期待はずれだ。
思い返す。
確かに他人よりも優れている自覚はずっとあった。それこそ生まれた時から。
剣道を習っていたあの日から。本気で『俺』が修練したら何もかも凌駕するだろうという自覚があった。
それこそ、人に言われた『天災』ってやつなんだろうと。それが自然の摂理だとすら思っていた。
あまりにも世界が『私』には矮小だってことに。
ちーちゃんはすごかった。けど、『俺』と同等なのは戦闘能力だけで惜しいと思った。それが全般に出来れば『私』と並び立つことも出来たのにとさえ。ちょっと悲しいことだけど。それでも親友だ。たった一人の。
強さだけが親友の条件じゃないのだから。
もっと、わがままになればとっくに宇宙に到達できたのだろうか?
誰も気にせず研究に没頭して、人でなしになっていたのなら一人で宇宙を彷徨うことができたのだろうか?
出来てただろうなー。こういう予想はよく当たる。
この家を出れば、剣道以外には学校以外には世界に目を向ければ『私』と同じことを考えている人が現れるのだろうか。と思いつつ過ごしてきた。
宇宙には存在しているはずだ。きっと。
だから、苦心して宇宙に平等に立てるようにと色々考えていたというのに!
これで数年経ってもまだ地上に世界は足をつけているのなら考えなくちゃいけないかもな。
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