ハーメルン
実況パワフルプロ野球恋恋アナザー&レ・リーグアナザー
第十四話 "七月四週" vsあかつき大付属 後編
六回表の攻撃は七番の一ノ瀬から。
一ノ瀬は待球がバレないよう、初球のストライクを豪快に空振りして見せる。
こういう意識の高さも助かるところだ。結局見逃し三振だが、あれだけフルスイングされればキャッチャーは迷うぜ。
八番明石も見逃し三振、九番の早川も当然、見逃し三振で終わる。
結果六回完全。無失点イニングスどれくらいになったんだろうな。猪狩は。
『六回パーフェクト! ライバルを前にいつも以上のピッチングを見せています! 怪物猪狩守! さあ六回裏、あかつき大付属、そろそろ追加点が欲しい場面。バッターは二番、六本木から、三巡目です!』
三巡目だ。惜しむことなく使ってくぞ。
(初球からマリンボールだ)
ビュンッ! と六本木が豪快に空振りをする。
八嶋から聞いたはずだが、それでも当たらない。
二球目にインハイのストレート、三球目はカーブを外に外して見せ球にして2-1にした後、インコースへのマリンボールで三振に切って取る。
三番の七井。七井に対しては初球は高めのストレートを外して見せた後、インコースへの緩いシンカーでファールを打たせ、1-1にした後にマリンボール二つで空振り三振。
四番の三本松は全球マリンボール。三球目にはさすがに当ててきたが、やはり捉えるには程遠い。
キャッチャーフライで打ちとり、六回裏は危なげ無く終わる。
『この回早川、上位打線をきりきり舞い! 三振二つにキャッチャーフライ、先頭打者どころかランナーすら出さず六回を終えました! そして試合は終盤、七回へ!』
「……さて、と。三巡目か。ここまで完全試合は完全にやられちまった感じだよな」
「そうだね」
「ああ、全くだぜ」
「……ふん」
「さて、……そろそろ反撃開始と行こうぜ!」
「おうっ!」
「……待ちかねたぞ」
「待ってました!」
「待ってたでやんす! さあ、キャプテン! 指示をくれでやんす!」
「ああ、良いか」
俺は防具を外しながら、皆の方を向く。
「矢部くん、初球は必ずストライクゾーンに、球種は恐らくだが、ストレートで来る。その球を使って、何ででもいい。……出塁してくれ」
「……責任重大でやんすね」
「ああ、でもストライクゾーンのバットに届くところに来る。……出来るか?」
「ふふん、甲子園に行くチームの一番に不可能はないでやんすよ! でも出塁できたらガンダーロボのフィギュアをおごってくれでやんす」
「一個だけな。次、新垣、矢部くんを二塁に何としても進めてくれ」
「バントってことね。分かった」
「そしてクリーンアップで返す。どうだ? 単純だろ?」
「……単純にして難しい。だが、それしかないだろう」
「ああ、クリーンアップに対しては初球は外角に来る。ボール球かどうかは分からないがな。……踏み込んで打つ」
「分かった」
頷いて、矢部くんがバッターボックスへ、新垣がネクストへ立つ。
悪いな猪狩、冷や汗もかかせずにこの回まで投げさせちまってよ。だが、それももう終わりだぜ。
この回で――必ずお前から点を取る!
『バッター一番、矢部』
『さあ三巡目に入ります恋恋! この俊足矢部から状況を打破したいところ!!』
猪狩がロージンバッグを手に付ける。
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