ハーメルン
実況パワフルプロ野球恋恋アナザー&レ・リーグアナザー
第五話 "六月二週~七月一週" vs聖タチバナ学園高校 前編

 速いもんでもう夏。
 栄光学院大付属高との試合が終わってから一ヶ月近くたつが、未だに女性選手出場問題は解決に至らないまま抽選日を迎えていた。
 今日中に結果が出なければ、今年の夏は諦めざるを得ない。

「……」

 ここまで緊張なんか知らずに練習してきた早川や新垣にも緊張の色が見える。ううむ……そういう集中出来ない状態で練習をするのは良くないんだがな……。

「よし、ストップ。今日は抽選会だ。……一応高野連の方から連絡は来てる」

 加藤先生からだいぶ前に伝えられた内容を俺はもう一度思い出して、復唱する。

「特例として当日まで出場資格のあるチームとして保留し、女性選手が出場して良いかの検討を当日までに行う。くじびきは昼の二時で総合体育館で行われるが、その一時間前までに連絡を行う。つまり、後十分以内だ。……その電話で俺たちが出場出来るか決まる」
「……うん」
「……分かってるわよ」
「凄いでやんすよ。あおいちゃんと新垣が全国の女性選手に道を開こうとしてるでやんすから」
「ああ、出場選手登録も事前に通達するというのから初戦のベンチ入りメンバーで大会最後まで固定するというルールになった。……それは、おまえたちの頑張りで達成出来たことだ」
「矢部くん、友沢くん……」
「……ありがと、矢部、友沢」
「っ、パワプロ様! 加藤先生から電話ですわ!」
「はわわわわっ、お願いします神様っ、どうかあおいとあかりちゃんが出場できますようにっ!!」

 七瀬が手を合わせて祈り、彩乃が慌ててケータイを俺にさし出してくる。
 皆が皆七瀬と同じ気持ちだ。一緒に出場出来るのを祈ってるんだ。
 頼む……! 早川達に道を示してくれ……!

「もしもし、加藤先生ですか?」
「ええっ! 今高野連から連絡があったわよ! 検討した結果――」
「……結果……?」
「――女子選手の出場を認めるって! 貴方達、夏の大会に参加出来るのよ!!」
「本当、ですか……!!?」
「ええっ!!」
「やっ――たああああ!!」

 それを聞いて、俺は思わず両腕を突き上げた。
 早川と新垣、矢部、友沢、明石や皆も顔を見合わせた後、想い想いのリアクションで喜びを表現する。

「加藤先生っ! ありがとうございます!!」
「ええ、本当におめでとう! それじゃ、今から私はクジ引きの会場に移動するわ」
「はい、俺達もすぐに行きます!」

 電話を切って、彩乃にケータイを返す。
 これで夏の大会に一年から出場出来る……! 関門は突破だ!!

「うーし! オメーら、聞いたとおりだ!! 俺らのエースとセカンドがしっかり出場出来ることになった!」
「やったー!! やったでやんすー!!」
「ぐすっ、あかりぃっ、ボクうれしいよぅ!!」
「ば、バカ、何泣いてんのよ! あはっあははははっ!!」
「……ふ、当然だ。参加出来ないなんて考えたくもなかったからな」
「よし! んじゃすぐクジ引き会場に移動だ! 初戦は七月の一週だけど今日で相手が決まる! 気合いれてクジ引き会場まで走るぞ!」
「「「「「「「「おー!」」」」」」」」

 全員に気合が入る。
 チームメイトが無事に大会に出場出来る。これ以上嬉しい事はないよな。
 うーし! んじゃ全員気合満タンでクジ引きに行くぞ!!

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