ハーメルン
黄金船の長い旅路 或いは 悲劇を幸せにしたい少女の頑張り 【改訂版】
10 トンネルを抜けるとそこは
ゴールドシップが目を覚ますと周りは明るくなっていた。
太陽は南天に燦燦と輝いている。
いつの間にか寝過ごして朝になっていた、ということはありえない。
寝落ちしていたらジャスタウェイが絶対に探しに来ていたはずであり、さらに言えば昼になるまで学園の噴水の周りに誰も通りかからない、ということもあり得ない。
過去に移動した、と考えた方がまだ説得力があった。
「服も変わってるな」
散歩に出るときには制服に着替えていたが、今の服装はスーツ姿だ。よくトレーナーが着ている系統の服である。
いつの間にか胸にトレーナーバッジも輝いているし、いかにも新人トレーナーと言った服装になっていた。
周りを見回すと学園の風景は見慣れたものと少し違った。
まず、校舎が全体的に新しい。あのおんぼろで壁の塗装が剥げかけていた校舎が、どことなく全体的にきれいだった。
また、建物自体もいくつか未来のものと異なっている。遠くに見える体育館は、明らかに未来のものと大きさと形が違うし、食堂も形状と大きさが異なっている。いくつか建て替えたのだろう。
過去に移動したと思って間違いないだろう。ひとまずどうしようかと、ゴールドシップは悩んだ。
残念ながら過去に戻ったゴールドシップの現状は、出自不明のトレーナーのコスプレをした美女ウマ娘でしかない可能性がある。戸籍もなければ、トレーナー登録もされていない可能性が高いのだ。なんせゴールドシップは未来から来た未来人。この時はまだ生まれてもいないのだから。
「あれ、軽く詰んでね?」
ひとまず現状確認が最優先である。ゴールドシップは隣に置いてあったカバンの中身を漁るのであった。
カバンの中を漁ると、まずは財布が出てくる。中には万札が15枚、案外大目に入っている。これでうまくやれば1月ぐらいはどうにかなる。他にはクレジットカードが入っている。これは使えるだろうか。ひとまず試しに使ってみて、使えたらラッキーだ。
あとはジャスタウェイとのお揃いの化粧ポーチと、携帯電話。ジャスタウェイからもらった、円筒状の体に、棒の腕と、死んだ目の顔を付けただけのシンプルすぎるフォルムの金色の人形、通称『黄金ジャスタウェイ』。あとはトレーナー資格証のカードぐらいだった。
「資格証が使えれば、ずいぶん楽なんだがな」
女子校であるトレセン学園は、第三者が容易には入れないようになっている。入場資格として使いやすいのが学生証とトレーナー証だ。特にトレーナー証があると、学園のほとんどあらゆる場所に入れるので、非常に便利だったりする。
この時代のトレセン学園でも使えれば便利なのだが……ひとまずそれを試すところからスタートである。というか、使えなかったら学園から追い出されて二度と入れない可能性もある。
そうなったらその辺で日雇いの土木のバイトをしながら生計を立てて、あとのことはそのうち考えよう。ゴールドシップはそんな覚悟を決めた。
ひとまずトレーナー証がどこまで使えるかの確認作業である。ゴールドシップは学園内を巡り始めた。
結論だけ言えば使えるものと使えないものがあった。
一番つかえたのはトレーナー証である。なんと、トレーナー寮にゴールドシップの部屋まで用意されていた。これで橋の下でのホームレス生活はしないですんだ。
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