ハーメルン
黄金船の長い旅路 或いは 悲劇を幸せにしたい少女の頑張り 【改訂版】
1 出会いの春と運命の交差点
「そっか、今日は入学式か」
現状を把握したり、未来と違うトレセン学園の設備を確認したりしていたりすれば3日ぐらいはすぐに過ぎ去った。
朝起きて正門横に入学式の看板を見かけ、今日が入学式であることにゴールドシップは気づいた。
「ちっ、手伝って給料稼いでおくべきだったぜ」
トレーナーの給料というのは当然何もしなくても入ってくるものではない。
一番大きいのは担当ウマ娘の実績に連動して支給される成果給であるが、それ以外にも教官として勤務することで定期的に入ってくるお金や、各種イベントの運営にかかわることで得られる一時給などもある。
これらの副業的な収入は大手チームのトレーナーならまだしも新人トレーナーなら無視できない金額である。
そんな稼ぎ時を見逃したことに後悔しながら、ゴールドシップは正門周辺をうろつく。
もしかしたら、有望なウマ娘が捕まえられるかもしれない。誰かに唾をつけられる前に、こちらから声を掛けよう。そんなことを考えていると……
「およ?」
道の真ん中で不審者のようにきょろきょろするゴールドシップの足下に、転がってきた絨毯がぶつかった。
「なんだこれ?」
転がってきた方を見ると、黒塗りの高級車が存在していた。見たこともない長さの車だ。明らかに高級ですと言った光沢があり、貧乏性のゴールドシップには直視できない光を放つ車だった。
この足元の絨毯って、セレブのためのレッドカーペットという奴だろうか。ゴールドシップは思ったが、同時に入学式でこんなものを使うなんて聞いたことが無かった。
友人の中でお嬢様というとやっぱり生徒会長のジェンティルドンナのアネキだが、彼女がレッドカーペット敷いて歩いているのなんて見たことが無い。なんせお腹が空いたといってカップ麺を3つも食べて、遠征時に外で外食するときは〇屋の牛丼キングサイズを必ず食べる女だ。ゴールドシップやジャスタウェイが悪い事を教え続けた結果、庶民派として覚醒してしまったのだろうが。
そう考えると、アネキもまた、お嬢様には少し足りないのかもしれない。そう考えると今から降りてくるのが本当のお嬢様なのではないだろうか。そう思うとゴールドシップはわくわくしてきた。
レッドカーペットはゴールドシップの足元で止まっていて、レッドカーペットを敷いた運転手らしいおじいちゃんは困惑していたが、車からはそういったおじいちゃんの焦りを察することなく一人のウマ娘が降りてきた。
輝かんばかりの葦毛の髪。その色はただの白ではなく、少しだけ紫がかっている気がする。
身長は高くもなく、低くもなくといったところで、大体160cmぐらいか。ゴールドシップより少し低い。顔は、綺麗すぎてちょっと近寄りがたいぐらい整った美人だ。ウマ娘は皆基本的に美人だが、その中でも美人というぐらい美人である。
そしてゴールドシップはその顔に見覚えがあった。
メジロマックイーン。画面や写真の中で見た、ゴールドシップの祖母であった。
[9]前話
[1]後書き
最初
最後
[5]目次
[3]栞
現在:1/1
[6]トップ
/
[8]マイページ
小説検索
/
ランキング
利用規約
/
FAQ
/
運営情報
取扱説明書
/
プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク