ハーメルン
黄金船の長い旅路 或いは 悲劇を幸せにしたい少女の頑張り 【改訂版】
3 初めての貴女との語り合い
メジロマックイーンを誘拐したゴールドシップは、そのまま食堂へと駆けこんだ。
そのままメジロマックイーンを席に降ろして座らせると、自分も向かい側に座った。
「なんですの! なんですの!!」
座ったメジロマックイーンはゴールドシップに抗議の声をあげる。
ですの調のお嬢様言葉なんて初めて聞いたゴールドシップは、ツボに入ってしまい笑ってしまった。
「なんなんですの!!」
「ひー、マックイーン、面白いな! さすがメジロ組組長の孫娘だぜ!!」
「人の家を反社みたいに言わないでください!!」
「でも黒塗りの高級車はやべーぜ。あんなのリアルで初めて見たし。あとレッドカーペットも。お前はどこの大統領だよ」
そもそもトレセン学園の入学式で、車で送り迎えされる者なんてめったに見ない。
現役のウマ娘にとって車はトロくてしょうがないのだ。
制限速度だって、一般道における車の速度制限は時速60kmだが、ウマ娘は時速70kmまで走れる。
特に東京だと渋滞もあるので走った方が圧倒的に速い。
ゴールドシップの頃だって、お嬢様といわれる出自の良いウマ娘は何人もいたが、わざわざ車で送迎なんて聞いたことが無かった。
「あれはですね…… おばあ様から心配していただいて……」
「あれか、抗争で狙われてるのか? 相手はどこだよ。シンボリ組か?」
「なんでそうなりますの!! 昔から体が弱いわたくしを心配してくれているだけです」
「まあまあ、そう怒るなよ」
尻尾を逆立てながらぷんすか怒るマックイーン。年齢的に年下のことを考慮しても非常にかわいらしい。
多分ゴールドシップが同じことをされたら普通にキレる。「ごるぅうううう!!」みたいに吼える。
見た目は似ているはずなのにこの差はいったい何だろうか。おそらく育ちだろうなと思った。
プンスカ怒るマックイーンが可愛くてからかい過ぎてしまったなと思いつつも、話を続ける。
「マックちゃん、体弱いのかよ」
「昔から熱を良く出していまして。特に脚が弱くて、よく骨膜炎になってしまうのです」
「ちゃんと食ってるのか?」
「いえ、脚に負担がかかるのでできるだけ痩せるようにしています」
「ちょっと脚を見ていいか? これでもトレーナーだからな」
「……変なことしないでくださいね?」
早速マックイーンの脚を触診し始める。
身長は160cm程度、12、3歳のウマ娘の平均的な身長は152cmぐらいだから目測でもわかる程度にはそこそこ背が高い。
触ると骨もしっかりしているが、にもかかわらず非常にすらっと細い脚をしていた。
ここに来るまでマックイーンを抱えていた時、無茶苦茶軽いなと思ったが、怪我しにくいように体重を絞っているのだろう。
「マックちゃん、入学したばっかりだしトレーナー決まってねーよな」
「ええ、そうですわね」
「じゃあ私と契約しようぜ、ちゃんと体づくりからしっかり見てやるからさ!」
「はぁ!? 何言ってますの!?」
「だから、アタシがマックちゃんを強くて丈夫なウマ娘にしてやるって言ってるのさ!」
ゴールドシップは自分がすごいトレーナーだとは思っていない。
だが、何十年も先の、しかも天才がパラダイムシフトを起こした後の知識を持っていると自覚している。圧倒的なアドバンテージがある現状、目標の人物であるメジロマックイーンを確保するのもできなくはないだろう。
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