ハーメルン
黄金船の長い旅路 或いは 悲劇を幸せにしたい少女の頑張り 【改訂版】
5 そしてデザートはロイヤルメロンパフェである
「ということでまずは飯だ。食べることはトレーニングとして大事なんだぞ」
「ご、ゴールドシップさん? 甘いものは厳禁ではないでしょうか?」
ひとまずその日の夕食から、ゴールドシップはメジロマックイーンと三食を一緒に食べることにした。
食べるというのはかなり重要である。なんせ、ウマ娘の消費エネルギーは普通のヒトと比べても莫大だ。
なんせヒトは成人男性では、短距離を100m10秒で走れればかなり速いが、ウマ娘は1ハロン、200mを10秒程度で走ることもざらにある。単純に2倍の速度で走るのだ。さらに走る距離は、同じ速度にもかかわらず、2倍や3倍ではきかないだけの距離を走るのだ。
単純計算でウマ娘に必要な運動エネルギーはアスリートのヒトの4倍である。そのエネルギーを賄うだけのカロリーが必要だし、それだけの速さを維持する筋力も、その速度に耐えられる骨格などの丈夫さも必要になる。
ウマ娘アスリートはそれだけの食事をとらなければならないのだから、食べるだけでも大変である。ウマ娘たちが山盛りの食事を食べているのは伊達ではないのだ。
そうした現実に基づいた食事をカフェテリアで用意してもらった。それがマックイーンの目の前に置かれている。メインの人参ハンバーグは特大サイズ3段重ね。マックイーンはパン党らしいので、フランスパンを1バケット、サラダもスープも巨大なボウルにたっぷりと盛られている。
そしてデザートはロイヤルメロンパフェである。高くそそり立っており、圧倒的甘味力を漂わせていた。マックイーンにとって甘味は厳禁という先入観があるため、これが一番恐怖の対象であった。
「パカっ! 糖質を大量に摂取する必要があるんだから、むしろ甘いもの食わねーと足りねーよ。脂肪だってただのデッドウエイトじゃねーんだぞ」
「そ、そうは言いましても、こんなに食べたらぷにぷにになってしまいますわ」
「ならねーよ。なったらダートに埋めてもらっても構わねーよ」
ゴールドシップは自身の判断に自信があった。
だって、それだけ食べてゴールドシップは勝ってきたのだ。しかも、怪我一つなく。
タキオン理論に基づいた最先端理論の申し子を自認するゴールドシップにとっては、よく食べるのは金科玉条の一つであった。
「だ、だってゴールドシップさんは私の半分ぐらいじゃないですか」
「私は現役じゃねーんだから当然だろ。付き合って走るかもしれねーけど同じだけのトレーニングはしねーからな」
マックイーンに比べれば半分ぐらいだが、それでもゴールドシップのほうもかなりの量である。ヒトがこれだけ食べていれば大食いといわれるだけの量だ。
二人のテーブルを見て周りのウマ娘は結構引いている。
「あ、食べきれねーとかいうなら考えるぞ。食べられる量はかなり個人差があるからな」
「ほ、本当に食べてもいいんですの……?」
「だから問題ねーって」
「では、いただきますの」
ゴールドシップは目を疑った。
マックイーンの所作はお嬢様そのものだ。上品にフォークとナイフを使って食べている。ゴールドシップのようにフォークでぶっさしてかじりつくなんてはしたない真似は一切しない。お嬢様力が高い。
にもかかわらず、料理は一瞬にして消えていく。
ゴールドシップの倍ぐらいの速度で、マックイーンは完食した。
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