ハーメルン
黄金船の長い旅路 或いは 悲劇を幸せにしたい少女の頑張り 【改訂版】
7 トレーニングの成果
わちゃわちゃトレーニングをやりながら1月が経過し、ゴールドシップも初任給を手にして最低限の生活基盤ができてきた。
一方マックイーンの方はと言うと……
「じゃあトレーニングコース1周、1600mな。よーい、スタート」
「はっ!!」
1月ぶりに全力でコースを走っていた。
1月の間、マックイーンは全く走っていなかった。
なんせ毎日ゴールドシップのゴルシちゃんスペシャルメニューをやらされていて、全く余裕がなかったのだ。最初の数日はメニュー終了後しばらく動くことすらできずに、ゴールドシップの何もない部屋に運ばれて泊まっていたぐらいである。
しかしそれも少しずつ慣れていき、やっと最近走るだけの余裕が出てきたため、1月ぶりにコースを走ることができるようになったのだ。
これは、トレーニングにより体が鍛えられているのはもちろんあるが、食事量を増やしたため体が急速に成長し、丈夫になっているのも大きいだろう。ソエも治り、体調もかなり良くなってきている。もっとも化骨もまだ終わっていないので無理は禁物だが。
コースを1周するマックイーン。特に問題なく1周し、ゴールドシップの前を通過した。
「どれくらいでした?」
「1分50秒9。かなりいいな」
タイムは1分50秒ちょっと。ダート1600mメイクデビューの標準勝ちタイムが1分40秒0であり、まだデビューも見えていないこの時期に流しでこのタイムで走れるのはかなり有望と言えるだろう。
「全然走る練習をしていなかったのに、タイムがすごい伸びていますわ」
「そりゃ、体を成長させて、体全体をバランスよく鍛えたからな」
「…… ゴールドシップさん、本当に優秀なトレーナーだったんですわね」
「だろ? まあ師匠ほどじゃねーが」
師匠であるゴールドシップのトレーナーは担当を10人以上持っていたにもかかわらず一人一人にあったトレーニングにケアを欠かさなかった。さすがにGⅠを勝っていたのはゴールドシップぐらいだったが、怪我をするメンバーは0だったし、勝ち上がり率も100%近かった。今のゴールドシップはマックイーン一人、もしくはもう一人ぐらい担当するのが限界だろう。改めて自分のトレーナーの凄さを感じていた。
だが、マックイーンにとってはゴールドシップはメジロ家の所属トレーナーではどうしようもなかった体質改善を1月で成し遂げた天才トレーナーであった。お調子者だが、腕は確かという認識をしていた。
「ということで全身を鍛える重要性もわかったと思うし、明日からはマシントレーニングもしていくぞ。で、全く走らないのもストレスがたまると思うけど、マックイーンはどれくらい走りたい?」
「毎日少しだけでもいいですから走りたいですわ。朝に自主的に走ってもいいでしょうか」
「真面目だなマックちゃん。あまり無理しないことと、どれだけ走ったか教えてもらえれば構わないぜ」
朝練なんて、ゴールドシップには縁がないトレーニングだった。だって眠いし。努力は認めるが、効率的にはそこまで良いわけでもなく、トレーナーも勧めなかったのでゴールドシップは基本したことがなかった。
「あの、もう一ついいですか?」
「なんだ?」
「一つお願いが」
ゴールドシップが明日からのトレーニングについて考え始めると、マックイーンが頼みごとをしてきた。
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